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「よし、これで全部だな」
車に詰め終わり、後部座席に陸を座らせる。
俺も助手席に乗り込もうとしたが、一瞬足が止まった。
「優斗? どうした」
「…………いえ」
機会があるなら、またここに来たい。
暖かくて好きだ。
「ぶーんっ、パンツマンが地球すくうのだ!」
「チャイルドシートが外れてからやりたい放題だな、こいつ」
「あはは、そうですね。というか、パンツ星人じゃなかったっけ」
「パンツマンっ」
陸の中ではお馴染みのキャラクターだ。
ヒーローものが好きなところはさすが男の子だが、あどけなさは陸だけのものだろう。
「あの、水曜日なんですけど。克彦と父さんのところに行ってきます。色々、話もしたいし」
「そうか。あいつがいるなら大丈夫だとは思うが、気をつけろよ」
「はい。気をつけます」
「母親のことも話せるといいな」
「……」
上手く返答できなかった俺は、窓にもたれて無心に空を見上げた。
「____えーと……このブルーベリータルトください。15の方で」
「はい、かしこまりました」
父の家に行く日になって、気まずさを抱えながらケーキ屋に寄った。
差し入れというかお土産というか、なんだか他人行儀だが。
会計を済ませて包装を待っていると、背後から頭を小突かれてドキッとする。
「なにやってんの」
「克彦っ……別に、なんでも」
隠したところで後で渡すものなのに、不意に誤魔化してしまった。
「家族に会うのに差し入れって律儀かよ」
「なにも言ってないだろ」
「んなもん見れば分かる。いい子ちゃんだもんな」
「……うるさいな」
克彦が悪すぎるんだよ。
口から出かけた言葉を飲み込んで、店員から袋を受け取った。
「そういえば……陸にプレゼント、ありがとう。喜んでたよ」
「そんなことしたな。あいつが唐揚げを贈ってきやがったから唐揚げを返してやった」
「はは、なんだよそれ」
「……お前は、あのガキといると見たこともない顔をするよな」
「え? そ、そうか?」
「ああ、ガキの頃から一緒にいたってのに、一度も見たことねえ」
最近よく言われるその言葉。
きっと、陸のおかげだ。
「あの子が俺を強くしてくれた、のかも」
「俺より先に親父ぶんなよ」
「それはっ、仕方ないっていうか。克彦はどうなんだよ。まどかさんとのこと……遊び、じゃないよな」
「アホか、んなわけねえだろ。あいつは婚約者だ」
「…………そっか」
なにかが弾けたように、スっと心が軽くなる。
克彦のことは許せないと思っていた。
でも、きっと祝福できる。
まどかさんと幸せになってくれることを願いたいと思う。
「なにニヤついてんだ」
「克彦を愛してくれるなんて、まどかさんは天使みたいな人だなと思って」
「んだとコラ。犯すぞ」
「嫌だよ。あんなに綺麗で優しい人、手放したら一生後悔しそうだろ?」
「……ま、お前よりも可愛いわな。あいつは」
くしゃくしゃと髪を掻かれて「うわ」と声が出る。
優しいのか優しくないのか。
克彦の言動は不思議だが、最近はそれも少し面白く感じている。
「なんかありゃ、松本が助けてくれんだろ」
「うん……俺も、なにかできればいいんだけど」
「んなこと気にすんなよ。あいつは頼られてナンボってやつだろ、あーいうのは甘えまくってれば喜ぶんだよ」
まぁ、確かに……そうかもしれない。
亮雅さんは頼られることに生き甲斐を覚えるタイプだし、俺は部下という立場でもある。
もしかしたら本当に甘えてほしいとか。
「上手く……できるようにする」
「けっ、不器用小僧」
余計なお世話だ。
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