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「なにカキカキしてるの〜?」
おもちゃ遊びに飽きた陸が隣のイスによじ登って原稿用紙を覗いてきた。
「しゅくだいだ」
「陸が読んでる絵本みたいな、物語を書いてるんだよ」
「ボク主役?」
「残念。これは作り話だから陸は出てこないんだ。16歳の男の子だよ」
「おもしろそう!」
陸が難しい漢字を読めるはずもないし、子どもに見られる分には恥ずかしくない。
本来なら高校生の男の子____雅紀は学校に行っておらず、施設の子どもという扱いになっている。
"母"というのは、施設の係員……いわゆる世話役のことだ。
「あ、これ"くるま"だ。陸わかるよ」
「正解。たくさん練習したもんな」
「ふふふーん」
雅紀の楽しみは空を見上げること。
俺の大嫌いな空。
なぜかその設定にしたくて、気づけば決まっていた。
「ゆしゃんも絵本だすんだぁ。じゃあ絵本なったら買わなきゃ」
「うーん、どうだろう。本になる人は限られてるし、陸の好きな絵本にはならないかも」
「えぇー、なになるの?」
「えっと、初めはこういう単行本ってものになるんだよ。それがたくさん売れたら、こっちの小さい文庫本にもなる」
「ん〜、陸もよみたいなぁ」
「……」
子どもにそんなことを言われると、真面目になってしまう。
もしも出版されなかったとしても、自分で製本を頼むこともできる。
せっかくだから読みやすいように平仮名多めに改変してもいい。
「本にするか考えておくよ。陸には読んでほしいしな」
「やったぁ! できたら500円あげるっ」
「ぷふっ、なんで親にお金払うんだよ」
「買うとき、いっつもパパもゆしゃんもお金だすもん!」
俺の本にお金をつけてくれるありがたさと言い、陸は可愛いなぁ。
「ぶーちゃんにいっぱいあるの」
「貯金してるの偉いな。どれくらい貯まった?」
「んとね、これくらい」
「ちっさ! 100円しかないじゃん」
「うそぉ。今ね、100円玉が20枚で……500円が30枚! あとは10円とかいっぱい」
てことは16,000円はあるのか。
6歳にしてはすごい大金だ。
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