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「……で、お前はどういう興味本位だよ」
『えー、興味本位なんて人聞きの悪い。おれは優斗を応援してんの』
クリームをかき混ぜながら、腕にくっついてくる陸の頭をポンポン叩く。
「しゅんた!」
「目を光らせないの」
スマホから聞こえてきたのだろう。
俊太からだと分かると尻を振りながら喜び始めた。
『え、なに? おれを呼んだ可愛い子ちゃんそこにいるのか〜』
「しゅんた、しゅんたっ」
「陸暑いって。ちょっと離れて」
仕方ないとスマホをテーブルに置き、スピーカー表示をタッチする。
随分子どもに好かれやすい男だ。
『やぁ〜、陸。キミの大好きな俊太だよぉ』
「しゅんただぁ! 今ね、ゆしゃんとケーキつくってる!」
『へえ、女子力高い親子だなぁ。おれにも食わせてよ』
「食べたいならそっちから来いよ。持っていかないからな」
『え! いいの、行くけど!』
陸と同じような反応をする俊太に呆れながら、短いため息をついて同意する。
亮雅さんは俊太を完全に許してくれているし、俺も俊太相手だと不安を感じない。
こうして気軽に呼べる友人というのも恐らくは俊太だけだ。
『陸しゃん、おれ会いに行くよ〜。可愛い顔を見に』
「しゅんたもお家あそびたいのっ、ケーキあげる」
『優しっ〜。じゃあ今から行くから、主任が帰ってきたら教えてくれよ』
「はいはい。亮雅さんを警戒しすぎだ」
その理由はなんとなく分かるけど。
上司の家に堂々とお邪魔できる社員はきっとメンタルが鋼だ。
1人いるとしたら、たぶん律だろう。
「スポンジ焼き上がるまで陸の宿題を見てやるよ。いっぱいあるのか?」
「ううん、2個だけ」
もうすぐ夏休み期間に突入する陸はまだ小学生ということもあり宿題が膨大じゃない。
それが社会人である俺や亮雅さんにはありがたいことで、同時に宿題へ積極的な陸が愛おしくもなる。
「こっちは算数、か。先に国語からやろう」
「さんすう嫌い〜」
「俺も嫌いだったよ。なんで数字の問題なんてやるんだろうな」
陸の気持ちになって言ったが、社会人として計算能力はある程度あった方がいい。
だが、俺も克彦とは違って暗算や計算式を解くのが大の苦手だったんだ。
陸の算数嫌いな気持ちには強く共感できる。
「マーちゃんね、陸わからないとこ全部わかる」
「誠くん頭よさそうだもんな」
「でもお絵かきとピアノは陸のが上手だもん!」
「ふっ、そうだな。誠くんは絵より勉強が得意なんだよ。陸の方が悪いなんて言わないから」
子どものしつけはよく分からないが、自分が過ごしてきた幼少期を考えてみれば陸にかけてやるべき言葉は何となく分かる。
というか陸のやつ、ピアノまで弾けるのか……
誠くんは学者や技術者、陸は芸術や音楽の分野でいつか活躍しそうだ。
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