アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
❀
-
「……は、アホなやつ」
克彦の一言にムッとしたが、ミニテーブルの前に胡座をかいた背中がどこか弱々しく見えて胸が重くなった。
そりゃあ俺だって、優しくて男らしい松本さんに憧れはある。
でもそれでも、克彦が好きだと思ったんだ。
兄だからじゃなくて。
「はぁーあ……めんどくせ」
「……ご飯、どうする」
まだ完全に安心しきったわけではない。
克彦に殴られた記憶、たばこの煙、それに耳に残る怒りの声。
簡単に許せるほど俺は強くない。
震えているこの手も、いつかはきっと。
「…………来いよ、優斗」
「え、な、なんで」
「なに目泳がせてんだ。別に殴らねえし」
怖くなんてない。
……っていうのは、嘘だ。
克彦の瞳に後悔が映って見えた。
「チッ……たばこは、止める」
「へ……?」
「ちょうど飽きてたところなんだよ。お前もやたらと煙を嫌がるし、極力吸わねえ」
「……」
唖然とした。
克彦が俺のためにリスクを背負ってまで決断してくれるとは思ってもいなかった。
たばこを止めるとか、そう簡単にいくわけないだろ……
「こっち来い」
「また……行きたい」
「は?」
「博物館、とか……また行きたい。一緒に」
俺なりの克彦に対する同意だった。
ゆっくりと這っていくと、指先が触れるやっとの距離まで近づく。
そのとき、勢い強く手を引かれて大きく体勢を崩した。
「わっ、ンン……っ」
後頭部をがっしりと捕まえられ、強引に舌が絡んでいく。
歯列をなぞる感覚が下腹部を刺激して涙が出た。
「んぅっ……ふ、ん……」
ここに来て変わってしまったふたつの形が、また大きく変化した。
強引で不器用なキスなのに、以前にはなかった愛情のようなものを感じる。
温かくて気持ちいい。
「はっ……もぅ、息できない……」
「まだへたばんなよ……上脱げ」
「な、そんな……いきなり」
「我慢できるかっつの。何年待ったと思ってんだ」
「は、はぁ……っ? そんな経ってないし」
「うるさい」
有無を言わさずにシャツを剥ぎ取られ、思わず胸元を隠してしまった。
克彦に殴られたアザはおおよそ消えたものの、まだ地味な鈍痛が残っている。
それに。
「今さら隠すのかよ」
「ち、違うし……その」
「また殴られるかもってか」
「う……」
「あークソ……だから俺から離れろっつってんのにお前は」
髪をグシャグシャと掻きむしってため息をつく克彦が随分と弱く見える。
愉快犯じゃない。
克彦には人としての心があるのだと、幼少期の頃から本能的に気づいていたのかもしれない。
「傷は」
「もう、ないよ。消えた」
「見せろ」
「っ」
腕を剥がれ、克彦に押し倒されたような体勢でマジマジと体を見つめられる。
居心地の悪さが恥ずかしくて手に力を入れてみても、結局克彦には勝てなかった。
「あんまり、見るなよ」
「触っても痛くねえの」
「……うん、もう別に」
「あっそう」
拍子抜けする返答で唖然としたのも束の間、露出した乳首を口に含まれてビクンと体が震えた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
159 / 231