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嫌な予感
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「...つむぎ?」
プシューっと電車のドアが閉まる。
窓越しにフードを被った男がだっこしている男の子を見つめた。
どこにでもいそうな黒髪に、見慣れてきた白くて細い腕。
でもつむぎ、今日は予定あるって言っとったし...
『貸しってなんだよ!!!貸しも何も...今日は予定があるんだよ...』
電車に揺られながら、お昼につむぎが言っていた言葉を思い出す。
つむぎ部活も入ってへんし、こっちでの友達はどーせ俺しかおらんやろから嘘やろと思った。
てか今日もおにぎりだけやったな...せやからあんなカリカリなるんやん...
それを心配して、今日はクラスメイトの小田内が美味しいと言っていたシュークリームを買いに行っていた。
つむぎが甘いもんすきか分からんし、俺は正直嫌いやけど手土産やったらシュークリームが丁度ええやろ、多分。
思っていたより人がおおくて、少し並んで購入したシュークリームの箱を見据えた。
またふと、さっきフードの男に抱かれていたつむぎ(仮)を思い起こす。
...あれやっぱりつむぎなんか...?
ニットの間から覗く細い指や手首を思い出す。
同じ制服やったっけな...よくみとけば良かったわ...
最初つむぎを見た時も、ほっそいなあ、と思った。
ヒョロっとしている訳ではないけれど、丁度いい体型より少し痩せ気味なんかな、と思った。
...エロいなぁ、とも思った。
黒髪の間から覗くうなじや、すこし優しめの声。
少し緑がかった瞳が前髪の間から見えて、仕草も優しげで。
初めは声をかけるつもりも、興味もみじんも無かったのに、次第に話すようになって今は一緒に行動している。
気を使ってるのか、少し人見知り気味なのか、仲良くなるまではたどたどしかったけれど、最近は思ってることをズバズバと言っている。
慣れてきてくれとるんかな、と思うと嬉しかった。
「次は〜○○駅〜」
電車にアナウンスが流れる。
そこはつむぎの最寄り駅やった。
よっしゃ、つむぎびっくりさせたろ
扉があいて、電車をおりて改札を通り、少し急ぎ足でつむぎの家に向かう。
つむぎの家には1度だけ来たことがあった。
ピンポーン、とマンションのインターホンを押す。
...でぇへんなあ〜......
もう一度ピンポン、と鳴らしてみたけど出てくる気配は一向にない。
「19時12分...」
スマホの時間を見る。
...こんな遅くまでつむぎが出歩くんか?
試しに電話をかけてみる。
「おかけになった電話番号は、現在使われていないか...」
「......」
聞き覚えのあるお姉さんの声がして、ぷつっと通話を終了する。
やっぱり、あれつむぎやったんか...?
あの見慣れた細い腕は、やっぱりつむぎやと思った。
「せやったらあの男はなんなんや...?」
つむぎに俺以外で外に遊びに行く友達おる訳ないし、つむぎの身内...?でもこんな中途半端な、しかも学校ある日に親族が大阪までわざわざ来るか...?
...嫌な予感がする......
...俺はまた、駅に向かって走り出した。
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