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転校生
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ぽかぽかと暖かかった日々も、段々と湿気を含むようになって、梅雨の季節になった。
相変わらず、俺たちはなんの進展もない。
...やっぱり好きって...友達としてだったんだろうな......
結局俺からも何も言い出せず、レイも普段通りで、なんでもない日々が過ぎた。
少し、いや、結構...悲しい。
「やっっっば、遅刻!!」
何時もより雨が降ってて、ざあああと言う音で目が覚める。
何気なくスマホを見たら、学校に間に合うギリギリの電車が出発した時間だった。
アラーム...設定出来てなかったんだ...
慌ててベッドから転げ落ちる。
いつも朝同じ電車でレイと会って、一緒に登校するから悪いことをしてしまったな、と髪の毛を手ぐしで直しながら思う。
少しくしゃっとしているけれど、おかしくは無い。
レイが前泊まりに来た時に置いていった髪の毛に塗るヤツでえいえい、と直して歯を磨いて、急いで家を出た。
マンションのエレベーターから降りて、急いで走り出す。道路に出て、曲がり角を曲がったところだった。
「ッあ!!!」
キキキーッと音がして、俺は雨に足を滑らせてコケてしまった。
ギリギリの所でタクシーが止まる。
「すみません...」
ぺこり、と頭を下げると運転手もほっとしたのか、そのまま元の位置に戻ろうとしていた。
膝が痛んだけど、俺も急いで走ろうと手から離れてしまった傘を取ろうとする。
...あれ?
あるはずの傘はどこにもなくて、周りを見てもそれらしきものはなく、人々が不思議そうに俺を見ていた。
俺がオロオロしていると、さっきのタクシーに乗っていた客らしき人が出てきた。
スラッと足が長くて、カッコよく挙げられた前髪をオールバックにした黒髪で、キリッとした眉毛とクリっとした大きな瞳でつり目のイケメン。
髪の毛が色んな方向に飛んでいるが、寧ろそれが格好良く見えた。
瞳は金色みたいにキラキラして、吸い込まれそうになる。
しかも同じ制服で、俺と同じ学年の赤いネクタイを締めていた。
同じ学校でこれだけのイケメンがいたら有名なんだろうけど...始めてみる顔だな...
「俺と同じ学校でしょ、乗っていきなよ」
ニヒっと笑う笑顔に少し思い当たる節があって、クスリと笑ってしまう。
「なんで笑ってんの」
「いや、笑い方が似てる人がいて」
ふふふ、と笑うと不思議そうにその人は俺を見て、タクシーの中に引き入れてくれた。
タクシーがまた出発する。
「俺、転校してきたんだ」
「え、そーなん...ですか?」
だから大阪でも俺と同じ標準語なのか...
「なんで敬語?同い年でしょ」
「あ、ごめん...」
あまりに大人っぽくて、つい敬語になってしまった。
その人の口角がきゅっと挙がって、綺麗な白い歯が見える。
「俺、加賀美リウって名前。リウでいーよ。君は?」
「澤田つむぎ...俺も、つむぎでいいよ」
「へぇ、つむぎくんかあ...」
むむむっと何かを思い出すような仕草をするリウに小首を傾げる。暫く考えて思い出せず諦めたのか、パッと俺に向き直ってタオルを投げてきた。
「ほら、タオル。着くまでに拭いとかないと、カッパって言われちゃうよ」
「カッパってなんだよ!!...ありがと」
恥ずかしくて、ぐしゃぐしゃと渡してくれたタオルで髪の毛を拭く。
怪我をしているであろう膝がズキズキと痛かったけど、これ以上迷惑はかけられないな、とぐっと我慢した。
リウはまだニヤニヤ笑っていて、俺はぷるるっと身体を震わせた。
「ひゃ!?」
「あ、ごめん」
不意にスンスン、とリウに首筋を嗅がれていた。
つい声が出てしまう。
「なに...!?」
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