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「アッ、んぅ…は、きもちぃですっ」
頬を赤らめて。
「っ、もっと…あ゛ァ゛!」
快楽で顔を歪める様に。
「ヤ、ぁ……も、むりぃ♡」
相手の身体と心を満足させる。
(あぁ、なんて簡単なごっこ遊びだろう)
また一人の男が愉悦に満ちた顔で部屋を出て行く。
部屋に残された男――モモは先程までの可愛く快楽に溺れた様に『装った』顔を捨て、疲弊しきった身体を恨めく思いながら煙を吐いた。
(体力、落ちたかな)
この店でも指名率NO.1の彼は幼い頃からのルーティンに従い、汚れた身体のまま情事が起こったベッドで意識を深くへと落として行く。
(……惨めだと、実感する……した方がいい)
だが、後一秒もすれば眠りに落ちたであろう彼の元にやって来たのは残酷なもので。
「モモくん!もう一人いける??と言うかいって!ほんとごめんね!」
「……死ぬ」
新たな部屋への招待状が届いた。
先程までのプレイが体力を使うものであった――そもそも一日に複数人とやること自体が珍しい事も相まりモモは顔を青ざめさせながら首を振る。
(無駄だって分かってるけど)
後に知ることだが、モモへ指名を入れた客は有名会社の社長息子であり断りでもすれば店の存続に大きく関わる事だったのだ。
「お待たせ致しました」
申し訳なさそうに眉を顰めながらベッドの前で立ち尽くしていた男を上目遣いで見遣る。
(背ぇ高……顔立ち…身なり…こりゃいい所の出だろうな。でもこういう店に慣れてなさそう)
モモの予想は当たっていた。
お客様――麻倉様は落ち着かない様子で二三拍言葉を詰まらせた後、やっとのことで軽く会釈を返した。
「そう緊張なさらずに。僕と、楽しい事を致しましょう」
モモが柔らかく微笑めば麻倉は効果音が付きそうな程の熱を顔に浮かべる。
その態度に内心笑いながら麻倉に擦り寄って行く。
「あ、あああの、俺、慣れてなくて、その」
「では僕がリード致します。麻倉様はただ快楽に身をお任せ下さい」
そこからは早かった。
思考が追い付かずあたふたする麻倉を他所に先程までの行為で解れていた箇所を再び開く。
少し上擦った声を出せばいとも簡単に麻倉のモノは勃ち上がった。
(楽そうな客で良かった)
慎重に、相手の顔色を伺いながら腰を深くへと落として行く。
当の麻倉といえば快楽から逃れる様にキツく目を閉じ、心ここに在らず状態だった。
こうも簡単な仕事となるとモモにも油断が生じる。
少しくらい演技を抜いてもいいだろう、と。
だが、それが良くなかった。
演技を抜けば自然と意識は他の場所へと向く。
モモの場合は自身の境遇についてだった。
曰くそれは、父への軽蔑であり別れた兄への危惧であり、お客様との行為の度に増す喪失感である。
(あー、虚無…虚無……虚しい)
何が起こったか、有り体に言えば完全に演技を忘れた。
性行為を繰り返す内にそれに慣れてしまった身体は既に感じる事を辞めてしまっていた。
とは言え、それは一瞬の出来事で直ぐに我に返ったモモはまず一番傷付いてはいけない顔を守る為に腕で覆った。
だが、恐れていた衝撃が来ることは無かった。
その代わりに何が来たかと言えば。
「っ……ぅ…」
(なき、ごえ…?)
そして冒頭へ戻る。
もう一度のもう一度言わせて貰う。
(俺にどうしろと)
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