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鎌やんと誕生日と
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「松永君と長野君の関係いいなー」
「え?」
鎌やんと松永と俺の三人で外で食事をしていた時に鎌やんが突然またわけの分からんことを言い出した。
「親友でもあり家族でもあり、カップルでもありって最強じゃないかー」
「はい?」
「おー、鎌やんは分かるのか」
「分かるよー。それっていろんな役出来るから飽きないよねー」
「役かよ」
鎌やんは相変わらずだ。
「鎌田先輩、そう簡単な物でもないと思いますよ。いくら親友として、家族として彼氏としてっていう顔を使い分けたとしても結局は長野、僕っていう一個人なわけですし。その役割はあまり有効ではありません」
「でもさー。松永君。学校のクラスとかでもあるじゃないかー。必ずリーダー的な者は生まれるし、ムードメーカーみたいな役割を受ける者も現れるしそれぞれにクラスの中でどのような役をするのかっていうのがー。それを二人は使い分けられるカップリングなんだろう?」
「いいえ、その考え方は集団心理においては.......」
たまに鎌やんと松永の話す会話についていけなくなることがある。
以前松永が言っていたように鎌やんは天才なのかもしれない。
お前アホだろ?とたまに、いやいつも思っているが。
松永と鎌やんの会話をぼーっと聞きながら俺は思う。
鎌やん松永のことを気に入ってるんやろうなーって。
大学生の頃は同じ語学クラスということもあって松永と吉野の仲の方がよさげだったが最近は鎌やんが松永や俺を呼び付けることが多い気がする。
大学時代の鎌やんはチャラチャラしていたイメージだったが周囲にいたのはチャラ男とかじゃなくモリクミたちみたいな松永曰く
アウトローなやつら
だったのでそれを考えたら不可解な言動はチャラチャラしてはいるが真の姿はまだ掴みきれないでいる。
不思議な生き物だ。
鎌やんは松永と話をしている時は楽しそうに見える。
俺が松永に対する好き、っていう感情じゃなく楽しいー!!お気に入りっ!!て感じだ。
鎌やんの話について来れるのが松永しかいないからだろう。
鎌やんの話が理解出来ない時が俺とか吉野とかモリクミ、児玉、お富さんにもあった。
やはりこいつは松永が言うように天才なのか。
俺にはアホにしか見えんのだが。
小難しい話をしている時ですらアホに見える。
「でー、長野君と松永君とエッチしたいなー」
「なんでそうなるんですか..........」
前にも松永の文章で読んで知ったが、まーたそんなわけの分からんことを言い出したかこのアホは。
「おぃいいいい!!なんの話してるーん!?」
「あー、長野君。僕と松永君と三人でエッチしてみようよー」
「嫌です!!」
「もったいぶらなくていいじゃないかー。僕もそっちに行きたいなー。楽しそうだー」
「いやいやいやいやいや!!なんの話だ、おぃいいいい!?」
「僕さー。彼女出来ても駄目なんだよねー。付き合ってると息苦しくてー。でも長野君と松永君の生き方面白そうだし試してみたいなー。三人で付き合ってみるってどうなんだろー?」
「どうなんだろー?じゃあねえよ!!」
「鎌田先輩本気で言ってるんですか?」
「結構本気だよー」
松永が大きな溜息をつく。
「鎌田先輩とうまくいく女性はなかなか出て来ないと思いますよ。それはゲイでも同じだと思います」
「そうかなー?でも長野君と松永君ならいいかなーと思える。長く付き合ってるし」
「それ言ったらモリクミ先輩とか吉野君とかもそうじゃないですか」
「あの人たちむーりー。僕は見た目いい人が好きなんだよー、むーりー」
俺と松永は苦笑いするしかなかった。
「鎌やん、男好きなん?」
「えー?分からないよそんなのー」
「はい?」
「松永君と長野君ならいいかなーと思ったから試したいのさー」
「前も同じこと僕に言いましたよね.......」
「えー?そんなこと言ってないよー?」
「完璧に忘れてますね.....」
松永が呆れている。
「鎌やん、いくら鎌やんでもそれは駄目ぇえええええ!!」
「えー?松永君と僕が寝るの見て嫉妬しちゃう感じー?」
「あったり前だろうが!!」
「しょうがないなー。じゃあ松永君、僕と長野君を共有するようにしよー」
「嫌です!!」
力強い松永の言葉に俺は不覚にも嬉しくなってポワーンとしていたがそれどころじゃなかった。
「えー。二人共わがままだなー」
「お前が言うな!!」
「鎌田先輩に言われたくありませんっ!!」
冗談なのか本気なのか分からない鎌やんのすっとボケた口調に俺と松永の意思疎通が出来たところで料理が運ばれて来た。
いったん口を閉じる。
ランチの時間に男三人でエッチしよう、駄目だぁあああとか話を聞かれるわけにはいかない。
「あ、これおいしいなー。松永君食べるー?」
「いえ、大丈夫です」
「そうー?でさー。この前の劇なんだけどー」
おい。
今さっきまでの会話もう流れてるんかい。
松永をチラッと見る。
俺を見て松永は頭を振っていた。
いいから黙ってやり過ごそうと松永が思っているように感じたので話を蒸し返さないようにした。
鎌やんと別れて。
「鎌やん相変わらずやな」
「そうだね。会話が飛びまくるね」
「きっとまた覚えてないんだろうな」
「思い付きで話してるからね。考えてないのか考えてしゃべっているのか。僕たちをからかって楽しんでいるのか本気なのかさっぱり分からない」
「だな」
「でも鎌田先輩天才なんだよね。知ってた?鎌田先輩の出身高校○なんだよね」
「まじで!?」
「うん。この前モリクミ先輩たちと鎌田先輩の家に突撃した時に高校アルバムたまたま見つけた」
そういう風に見えないんだが......。
天才は変態、いや変人多いって言うから鎌やんもそんなやつなのかもしれない。
「ところで松永。鎌やんと俺から攻められたいとか思ったりした?」
「は?」
「いや、だからさ。鎌やんも黙ってふつーにしてればそこそこイケメンやん。やけん俺たちからやられたいとか思った?」
「バッカじゃないの!?そんなことしたいって思うわけないやん!!」
俺の変な質問に松永が嫌そうな顔をして答えるが。
なんとなく嬉しい。
「今日はどんなエッチしよっかー」
「もういいよ.......」
「いいわけあるか!!なんでお前はそんなに性欲ねえんだよ!!お前俺たちまだ20代半ばでガツガツしてる時期だろうが!!」
「みんながみんな長野みたいにガツガツしてないやろー!!」
「いーや!!俺たち位の年代の男って常にムラムラしてるって!!」
「嘘つけ!!」
「嘘やないって!!」
帰りの車の中で松永と言い合う。
「もう!!エッチのことばかり言うのやめん?長野、八王子に向かって」
「なんで?」
「いいから行って」
松永が言うので家に帰らず言われた通りに八王子に向かう。
自分たちの住んでいたアパートの近くのコインパーキングに車を停めた。
「ちょっとこの辺りも変わっちゃったね」
「そうやな。知らん店増えたな」
「川まで歩いてみよう」
「おぅ」
昔よく二人で歩いた川へ向かった。
あー、もうあれからこんなに時間経ってるのか。
高校卒業してすぐにこっち来て二人で歩いたなー。
あの頃は松永あんまり笑わんかったなー。
しばらくは付き合えなくていつも毎晩松永思ってナニしてたなあ。
土手に到着した。
あの頃駆け上った土手もなくなったなあ。
ゆるやかなカーブで土手を上れるスロープを二人で上がって川べりに降りる。
「少し歩いてみよう」
「おぅ」
二人で歩いていたら松永が立ち止まった。
「この辺りやったよね?」
松永の言葉にすぐ思い当たる。
「ああ、この辺りやね。初めてキスしたの」
松永が着ていたジャケットのポケットをゴソゴソしていた。
「これ。早いんだけど僕出張でいないかもしれないから。誕生日おめでと」
「おぅ?」
三日後は俺の誕生日だった。
ここ何年かは二人共仕事だったりでプレゼントを渡すことはあってもゆっくり二人で誕生日を
祝うことが出来なくなって来ていた。
ラッピングされた箱を受け取る。
「開けていい?」
「うん」
ブランド物の時計だった。
「高かったんやないん?」
「うん。高かった。悩んだ」
松永の言い方がおかしくて笑った。
嬉しくて笑ったのもある。
「なんでここに連れて来たん?」
「うん。ここがスタートだったから。ここから。これからも一緒に時を刻めるようにね」
「そっか」
「なん、その返事......もっとなんかないん?」
拗ねるような松永を見る。
こんな時いい言葉が浮かばない。
たくさんの気持ちを伝えてあげたいしこの喜びとか感動を伝えたいんやけど。
これしか浮かばん。
「好きだ」
あの頃だったらきっと人目なんか気にせずに抱き締めていたと思う。
俺も大人になったんだと思う。
それでも気持ちは変わらない。
松永がニコッと笑う。
「そう」
「お前からは?」
「うん?」
「お前から俺に他にないん?」
「うーん?」
素直じゃねええええ!!分からない振りするんじゃねえええ!!
お前は俺が今一番聞きたい言葉分かってて分からん振りしてやがっただろー!!
「誕生日おめでとう以外にあるやろ?」
「そうだね。僕も長野好き」
俺のあまりのしつこさに諦めて松永が笑いながら言う。
やっぱ抱き締めとこう。
まだ明るくて人がチラホラいたけど軽く抱き締めてすぐ離れた。
これでも我慢した。
松永怒るかな、と思ったけど。
松永が嬉しそうだったので間違ってなかったと思う。
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