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言えなかった言葉
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「無理して書かなくていいのに」
寝室から松永が出て来た。
「寝とけ」
「少し体調いいから」
風邪をひいてしまった松永の代わりに俺はリビングのPCで話を書いてた。
俺が体調悪くさせたに間違いないし松永が更新出来んのを気にしてるから俺が書こうと思って書き溜めようとしてた。
松永はリビングのソファに沈み込んで俺がキーボード叩くのを無言で見てた。
「ごめんね」
「なんで松永が謝るん」
「分かんない」
会社は休めないみたいで微熱続きのまま会社に松永は行ってた。
俺が帰って来た時はいつもソファでだるそうにしてた。
飯の準備はせんでいい洗濯もせんでいいと言った。体休ませろって言った。
多分さ仕事でもなんかあったんやろうなと思う。俺に言わんけどさ。
なんかあったんやろう?表情見てればなんとなく分かるさ。
「はよよくなれよ」
「うん」
手を止めて松永のそばに座って手を握る。
うまく言葉に出来んのやけど弱ってる松永見ると不安になる。
俺より長生きするんやろ?俺置いて行かんでね。一緒に長生きしよ。
松永の携帯が鳴る。
松永の会社の先輩の近藤さんからやった。
「電話代われ」
松永の体調の心配と仕事の件で電話して来た近藤さんと話をした。
「近藤さん松永休めんの?休ませられんですか?」
「ごめんなさい。休ませてあげたいけど年末が近づいて仕事が増えてるの。例年そうなんだけどこの時期は多いの。本当にごめんなさい」
「せめて出張とか残業なんとかしてあげられんですか?」
「ごめんなさい」
近藤さんは謝るだけだった。
松永は俺が心配している声を聞きながら複雑な顔してうつむき加減で笑ってた。
それを横目で見て俺がさらに強めに言おうとするのを
「ありがとう。大丈夫だから」
と俺から携帯を奪い取って近藤さんと話をして電話を切った。
「休め」
「休む程じゃない。それに自分が抜けたら他の人に迷惑がかかるんよ。回らなくなる」
「やけど」
「仕事やりがいあるし好きだよ。好き。嫌なこととか悲しいこともあるけど仕事ってそういうもんでしょ。年末で事故も増えるし亡くなる人も増えるから。だから早く落ち着いた生活に戻してあげたいから。僕たちそう思って仕事するようにしてる。早く解決してあげられるように」
他のやつらなんかどうでもいい。
どうしてお前そんな小さい手で人の人生まで背負うとするん?
仕事って松永割り切れてない気がする。
帰って来て松永の顔見たら今日の仕事は辛かったんやないかな、とか。悲しそうな顔しとるなとか。たまに思う。
そういう時は目を背けないかんって。そうせんと松永がきついやろう?
俺の嘘も信じる。仕事でも全部まともに受け止めてしまうんやろう?
なんでそんなに不器用なん?
他人の為に傷背負ったりせんでいいのに。
他人の心の痛みまで請け負わんでいいやろ?
言葉に出してしまいそうになるのを俺はぐっとこらえた。
松永を思っての俺のその時の気持ちは言葉に出したら松永が傷つくだろうから。
体が弱ってる松永に今その言葉伝えたらいかんような気がしたんよね。
「ずっとそばにおるけんね」
代わりにそう言った。
「うん。長野もう無理して悩みながら書かんでいいってwww」
松永が嬉しそうに笑いながら言う。
「松永みたいに書くペース早くないけんなぁ。ネタないぞ」
「だから無理して書かなくていいって」
言いたいことや伝えたいことはたくさんあるんやけど言葉に出来んよね。
何かが毎日あるわけじゃないけど心に思ったこと全部そのまま伝わればいいなって思う。俺は書くの苦手やし早く書けんし気持ちも伝えきれんけんさぁ
「長野」
「なん?」
「長野の文章で書けばいいやん。僕に合わせんでいいよ」
「どいうこと?」
「僕に気遣って長野の文章らしくない時ある。僕の文章に合わせてる気がする」
「そう?」
「うん。長野ならもっと汚ない言葉で言うなぁとかここで自分押し殺してるなぁ無理してるなぁって思う時ある」
読む人おるけんさ。
本音では書かん時だってあるさ。
松永の読んでる人もおるやろうけん。俺のとこで嫌われて松永まで嫌われたら嫌やけん。
「僕に気ぃ遣ってるんやろ?長野らしい文章でいいよ。下品な言葉とかでもいいやない。僕そんな正直な長野が好き」
「いやーそのまま書いたら読む人間どんびくわ」
「そうかもだけどいいよ。僕もそんな長野の本音が読みたい」
だから今回書いた。
その時思ったこと。
伝えたいこと。
ちゃんと言葉で伝えないかんなと思って松永にも伝えた。
文章にすることも伝えた。
もっと正直に本音言おうって二人で話してもっと俺に愚痴れって言って。
会社のこととか心の中で思ってることとか。
誰かの為とかじゃなく俺の為に生きれって言った。
俺の為に生きてって欲しいってわがまま言った。
他人のことで悲しそうな顔して欲しくないって。
俺ガキみたいやけど嫌なんよ。松永が傷つくのも悲しそうな顔してるのも。
それならそれで俺が慰めるけん全部話して欲しいって伝えた。
欲しいのは松永だけで他はもういらんからって。
松永は分かったって答えたよ。
長く付き合ってもいろいろあるよね
「松永さ」
「うん」
「休みいつ?」
「今度の週末は休めると思う」
「そっか。ドライブ行こっか」
「またそう言ってラブホに行くんやないん?」
「どうだろなー?その時の気分かなー」
「はぁ」
「男二人でデートコースって俺らなかなか出来んね」
「カップル多いからね」
クリスマスだって俺らがデートコースに組むようなプラン立てられない。
男二人でそんなとこ行ったらバレバレやん。
「車でさ。東京出てどこか他の県まで行ってみよっか」
「いいよ。長野だけ運転やときついやろうけん僕と交代で運転しよ」
「そうやな」
そう答えたけどずっと助手席にいさせるつもりだった。
俺がずっと運転して松永助手席で俺の進む道アシストしてくれればいい。
松永休ませてお・も・て・な・ししてやろう。
隣で笑ったりたまに下半身に伸ばす手を叩かれてそんなドライブしてどっか松永が気が休まるようなド田舎の温泉でもネットで調べて行って二人でのんびりして。
二人でいる時はいつも笑顔でいられて気持ちよく過ごせるように全部忘れて俺たちだけの為に使おうって思った。
「モリクミ。松永体調悪いけんさ来るなよ」
「やーんっ!?お見舞いに行きますっー!!」
「来たら女のお前でもブッ飛ばす。モリクミ本気やけんな?男女平等パンチを全員に喰らわす。」
「あーんっ!?」
「松永休ませたいけん来るな。お前ら騒々しすぎる。松永の熱がぶり返す」
「やーんっ(涙)」
「北斗有情猛翔破喰らわすぞ」
「あたしサウザーッ!?」
この前の乙女ロードで北斗神拳の同人誌読まされて技まで覚えてしまったんやけどモリクミ俺の言葉に切り返すとはさすがやな。このネタ女で分かるやつおらんやろう。
汚れでサイテーな言葉を男の俺が女のモリクミに言ったんやけど正直に今回書いた。
俺のこんな一面読んでも無理じゃないッスって人いてくれるならまた二人で出かけたことでも書こうと思う。
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