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ごめん
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「緊張してるん?」
「うん」
鏡の前でスーツの松永が緊張した顔しとった。
松永休職明けの初出勤の日なんやけどね。
「緊張せんでいいって。もちっとバシッと髪決めようぜ。俺やるけん」
「いいよ」
「いいけん」
松永の髪触ってワックスで髪の毛ねじったり流れ作ってシャレオツにしてやる。
「かっこいいよ」
「いいのに。はぁー緊張して来た」
「車で送るよ」
「いいよ。長野は僕より出社時間遅いやん」
「松永送ってからどっかでコーヒー飲んでゆっくり会社行くけん」
「ありがとう」
車に乗せて松永を送った。
松永が振り返って手振るんやけど顔がこわばっとる。久しぶりの出勤やけんほんと緊張してたんやろーね。
そげん様子の松永なのに。
ほんとごめん。
車ん中でそう松永に思っとった。
これはもう松永も知っとるし、今やから書けるんやけど松永は仕事からはずされることになっとった。
松永が休職中に松永の先輩社員の近藤さん(♀)から電話来たんよね。
「近くに松永君いる?」
「変わる?」
「長野君と話がしたいの。松永君には聞かれたくないんだけど」
「へ?」
松永に買い物行って来る言うて外出て話す。
「松永君がこの仕事からはずされることになってる」
「へ?」
「長野君、津島さんと緒方さんって知り合い?松永君とも知り合い?」
「知っとうよ?」
「あの人たちから松永君を今の業務からはずして異動させろって。うちの社長に話が来た」
「うぉ?なんで?」
「その人たち私たちのグループ企業の親会社の役員と役職なんでしょ?松永君をはずして他のグループ企業に異動させるって話になってる」
「なんそれ?」
「私が聞きたいんだけど」
どーいうこと?
あのおっさんたち何してるん!?
松永職場復帰するの心待ちにしてやっと目処ついたのにそげんことしたら松永落ち込むやん!!
「社長に話があってね。うちの部長も課長も食い下がったんだけど駄目みたいで。人も少ないし松永君に抜けられて困るのは私たちなんだけど、親会社からの命令で」
「圧力かけられたん?」
「言い方悪いけどそうね。その人たちと知り合いなら取り消すかもう少し考えて欲しいって言ってくれない?」
「松永それ知らんのやろ?」
「知らない。会社の人間で知っているのは直属の上司の私と部長と課長と話が来た社長だけ」
「なん、松永復帰させてすぐ異動させる辞令が降りるん?それひどいやろ!?松永のこと考えてるん!?」
「私も社長に言ったんだけど立場的には私たちは子会社のグループで強く言えないのよ。松永君の知り合いならどうしてこんなことするわけ?松永君悲しむし落ち込むに決まってる」
「分かった。聞いてみるけん。松永には辞令が出るの内緒の話になってるん?」
「そう」
「ひでぇやろ!!」
「でしょ。長野君、誰から聞いたって言われたら私の名前を出していいから。私はどうせ6月で退職するから怒られてもこわくない。お願い」
「分かった」
俺は津島のおっさんと緒方の連絡先を知らんけんモリクミに連絡する。
「津島のおっさんと緒方さんの連絡先知っとる?」
「あーん!!知ってますーっ!!」
「教えろ」
「やだーん!!私も一緒にー行くーっ!!あらーん?松永くーん知ってると思いますけどー?」
「別になんもせんし食事に行くわけじゃねーっ!!ただ話したいことあるだけやけんはよ教えろ。松永にこのこと言うなよ」
「あーん?」
津島のおっさんと緒方さんに連絡して仕事帰りに会う約束した。
家で待ってる松永には残業になるけん言うた。
指定されたところで待ってたらスーツ姿で二人現れたんやけどそん時俺顔が怒ってたんやろーね。
津島のおっさんも緒方も察しがついとったみたいやった。
「なんで松永復帰したらすぐ異動の話になってるん?」
開口一番に俺がダイレクトアタックしたんやけど
「誰から聞いた?これは本人にも秘密の内容だったんだけどな。長野君がどうして知ってるのかな。松永君は知ってるのかな?」
って緒方さんが渋い顔しとった。
「松永はまだ知らんですよ。松永の面倒ずっと見て来た近藤さんって人から聞いた」
「文句言わないとなぁ。社内の秘密が漏れるなんてね。どーなってるのかな」
「それはいいけん。なんでそんなことしよーとって!!松永が傷つくやろ!?復帰してすぐお払い箱みたいにされたら松永の性格やけん分かるやろ?なんでそんなことするん!?」
俺が怒るのを津島のおっさんが手でなだめた。
「松永君の為だよ。聞いてほしい」
津島のおっさんが俺が落ち着くの待って話したんやけどね。
「松永君をあそこに口利きしたのは私たちで申し訳ないと思ってる。松永君は仕事の部分以外でも関係者に肩入れし過ぎてる。私の甘えで松永君にそうさせたこともプライベートの件であった。結果こうなった」
「そりゃさ、松永余計なことに顔突っ込むけんさ仕事関係なしになんかしよったかもしらんよ?あいつ優しいけんさ。でもそれで異動ってどうなん?なんか悪いことしたわけじゃないやん!!」
「悪くないよ。でもね長野君。調査員は調査して報告書上げるだけでいいんだよ。その後の関係者の生活のことや精神面のフォローや痛みの面倒を見る必要はない。どうやら松永君随分そんなことをしてたようだけどそれは業務に関係ない。松永君の神経をすり減らすだけでしかない。そんなことを大切な後輩にさせるわけにはいかない」
「やけんってやり方が悪いって!!」
納得いかん。
緒方が俺に言った。
「松永君の性格は長野君が一番分かってるだろう?僕たちが言っても頑固だから聞かないし転職もしない。職場復帰したらまた同じように彼はするよ。これはね、僕と津島先輩だけじゃなく長野君たちのお友達の名前なんだったかな........外国に帰った子にも言われてそういう風にしてるんだけどね」
お富さん?
「1か月だけじゃ足りなくてね。松永君の異動先.....受け入れ先を決めてる最中だったから三人でまだ休職するように説得するのも大変だった。ほんとに頑固だ。僕たちが言っても聞かないだろう。仕事だけしていればいいけど長野君、分かるだろう?松永君は放っておけない人だろう」
分かるよ。
働く男でゲイ部分の話以外は全部ほんとにあったことに少し色付け足したんやろーし。
松永仕事以外でいろいろしてたんやろ。
優しいけん仕事以外でも人助けしよったんやろ。
「復帰したらまた同じこと繰り返すよ。悪いことじゃないけど松永君には負担が大きい。今回がいい例だろう、体壊したじゃないか。だからあそこにはいさせるわけにはいかない。確かにやり方は傷つくだろうが将来のことを考えたらこれが一番いいと思う。長野君が言ってもそれは聞いてくれないだろう?こういう形で現場を離れさせた方がいい」
「やけど...........」
早く戻れるといいなって言いよる顔見て来たけんそれ思うと胸が痛い。
転職せん?って俺からも言ったけど言うこと聞いてくれそうになかった。
やけんってこのやり方は俺は嫌いやった。
「松永には言わんでするん?知らせんの?」
「知らせるつもりはない」
「俺言うよ。松永が異動してしばらくしたら俺松永に言うけん」
「言ったら松永君のことだから........」
「俺がちゃんと松永に説明するけん!なんも知らされんのが一番かわいそうやん!!なんも知らんで新しい職場に理由もなく飛ばされるんぞ!?松永のことやけん体壊したから迷惑かけたからって絶対傷つくの分かるやろ!?俺ちゃんと松永に説明するけん!!みんなの考えたこともちゃんと話して説得する!!」
「長野君の言うことならね、聞くかもしれないけど。どうだろうね。松永君の復帰の日が近いけどその前に言うのはやめて欲しい。長野君でも説得出来るとは思えない。強引なやり方だけどこれしかないと思ってる。異動先もポジションを開けて人員調整は済んでいる。変更は出来ない」
津島のおっさんが難しい顔して腕組みしとった。緒方もあんまいい顔してない。
「分かった。納得いかんけどそれ松永のこと思っての行動なん?」
「そうだ」
「そうだよ」
そうなんやろーけど.........なんでこーなるんかな。
松永が職場復帰した初日。
家に帰ったら松永が飯作りよった。
「お帰り。今日早いね」
「おぅ。久しぶりの出勤どうやった?」
「うん。みんな優しかった。今日は初日やけんって事務処理ばかりやったけどその内現場に出ると思う。仕事たまってるし早くみんなの足引っ張らないようにしないと。人いないから」
そう言って松永が嬉しそうに笑った。
ごめんな。俺松永が職場去ることになるの知っとったんよ。
でもさ、この前みたいにお前が体調と心壊すの俺は嫌なんよ。やけんねごめん。知っとるけど俺松永に話さんで津島のおっさんたちの話に乗るよ。お前は知ったら岩にしがみつくみたいに固執するやろ?頑固やけんそげんことしてる津島のおっさんや緒方さんに詰め寄るやろ?
憎んでしまうやろ?違うんよ。お前が大事やけんみんなそうすると。
やけん、辞令が降りる日までなんも俺言えんかった。
数日後松永が家で泣いとった。
辞令が降りたんやろーね。
俺が会社から帰って来るとトイレに駆け込んで行った。
出て来たら涙流してないけど目が真っ赤やったけんね。
「松永」
「なんでもないんよ。目にゴミが入ってコンタクトがずれたと。痛かったんよ」
松永笑ってそんな嘘言うもんやけん抱きしめてしもた。
ほんとごめんな。
「なんか辛いことあったん?」
「なんもないよ」
そうやってまた嘘吐きやがる。
いつ松永に話そう。
津島のおっさんと緒方とお富さんの考えたことや気持ちと近藤さんのこと
俺の気持ちと願いとかも
「ごめんご飯まだ作ってないんだ。すぐ作るけん待っとって」
「今日はさ外食べ行こうか」
「いいよ。作るけん。僕の仕事やけん」
僕の仕事やけんって口への字にして泣かんようにしてるのがいじらしかったんよね。
そう思ってた仕事お前から俺たち奪ったんよね。
「モリクミたち誘って外食べ行こう。いいやろ」
携帯で全員に連絡した。
時間かかってもいいけん今日絶対来いって言った。
津島のおっさんも緒方も佐伯さんも戸田も奈々子も吉野も奥田もモリクミも鎌やんもお前ら全員来い言った。
絶対お前ら来いって。
全員来て津島のおっさんと緒方は知っとったけど他のやつらが松永が元気ないの気付いとった。
「松永くーん。あーん?」
「あんまり食欲ないから大丈夫です」
モリクミが俺見る。
「なんかあったっしょ?」って目が訴えとる。
他のやつらもそうやった。
「お前らせっかく集まってるんやけん派手に飲もーぜ!!食え!!飲め!!」
俺のこともみんな見よったけど気付いてくれたんかねー。いつも以上に騒いどった。
「今日津島のおっさんと緒方さんのおごりやけん、ガンガン飲めぇええええええ!!ビール持って来いぃいいい!!モリクミも飲もーぜ!!」
「あーんっ!!いただきますーっ!!」
「いいよ。みんなじゃんじゃん飲んで食べよう」
「僕も払うんですかね?」
鎌やんと吉野が松永のそばで松永の様子気にしながら話かけたり飯食わせようとしよる。
松永も元気ないのをばれんように無理やり頑張っとる。
こげな飲み会今回一回きりでもうしたくねーなって思った。
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