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久弥が、言葉を選びながら、丁寧に返事をくれる。
「…すみません…もう少し…時間をくれませんか……?
正直…、今はまだ…樹さんを…心から信用はできない…」
当たり前だ。
その場で拒絶されないだけでも、安堵する。
「…そうだよな…。
でも、好きでいるのは許して?」
懇願すると、久弥が頷いてくれた。
「また、誘ってもいい?
久弥の気が乗らない時は、断ってくれていいから」
また小さく頷いてくれて、それだけでもう、泣きたい程に嬉しかった。
「ありがとう。
せっかくだから、食べていくくらい、付き合って?」
笑顔を作って、問い掛ける。
「はい」
久弥も漸く小さく微笑んでくれた。
それからたびたび、久弥を誘った。
互いに忙しかったが、それでも久弥は月に1~2度、誘いに乗ってくれた。
久弥を傷付けないように、恐がらせないように、ゆっくり距離を詰める。
しかし、きちんと久弥が意識してくれるよう、思いを伝えることは欠かさなかった。
絶対に、他の男に身体を許す前に、再び俺の方を向かせたい。
あの告白から、半年程。
今も久弥は、たまに誘いに乗ってくれる。
と言うことは、“好きな男”とは進展が無いのか…。
そろそろ、もう一度ちゃんと告白を…。
そう思って、指輪を準備した直後だった。
久弥から、誘いのメールが届いたのは…。
もちろん、承諾する。
あの後から、初めての久弥からの誘い。
それは、どんな意味か…。
“彼氏が出来たから、樹さんとはもう会えない”なんて言われたら、そう考えただけで怖かった。
しかし、俺に断る権利なんてない。
久弥を酷い方法で傷付けたのだから。
いくら傷付いても、許して貰えるまで、振り向いて貰えるまで、足掻くしかない。
格好悪くたって仕方ない。
簡単に諦めてあげるつもりなんて、今はもう無かった。
どうか、この指輪が無駄になりませんように…。
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