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本宮の憂慮1.
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「ただいまー」
「おかえり」
久弥がやっと帰ってきた。
課長が霧島に変わってから、久弥の帰宅が遅くなっている。
疲れて見えるのは、仕事内容が煩雑だからだけではないように思える。
「遅かったな」
くしゃっと髪を撫でて軽くキスすると、久弥が眉を下げてなんだか情けない顔をした。
「すみません、ちょっと時間かかっちゃって」
「ん~、疲れてるな~。
霧島課長、遣りづらいか?」
両頬を手で包んで、コツンと額を当てる。
「そんな事無いですよ?
ちょっとやり方違うから、手間取りはしますけど。
慣れるまでの事ですから」
無理に作られた笑顔が、痛々しかった。
「そっか?
キツかったら言えよ?」
わざと茶化すように久弥の尻を揉む。
「大丈夫ですよ。
課長よりも、セクハラ部長の方が問題です」
普段の久弥なら、このままセックスになだれ込むか、恥ずかしがって膨れるか。
だが、今日は疲れた顔で冷ややかな視線を送られた。
「セクシャルではあるけど、ハラスメントじゃないだろ?」
俺のからかいすら、スルーされる。
「あのー、久弥サ~ン、無視が一番キツいんだけど~…」
そんな言葉も、虚しく響くだけだった。
キッチンに用意しておいた夕食を見た久弥が、また申し訳なさげに眉を下げる。
「すみません、俺の担当なのに…」
「そんなの気にしないで出来る方がやればいいだろ?」
そう言っても、久弥の気は晴れない。
きっと、今は俺が何を言っても、逆効果だろう。
こういう時、直属の上司と部下って関係がじれったい。
久弥の性格からして、課長である霧島の愚痴にもなりかねない事を、部長の俺には話してはくれないだろう。
しかたがない。
もう暫くはぐっと堪えるか…。
気合いを入れるように両頬をパチンと叩く久弥を見ながら、霧島の元に付かせた事を、今更ながら後悔した。
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