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笹井くんが去って2人きりになると、途端に身体が震え出す。
ほっとしたせいだろうか。
とにかく久弥の体温を、存在を感じたくて、ぎゅうっと抱き締める。
久弥に手を触れられ、自分の手が冷え切っていたことに今更気づいた。
「無事で…良かった…」
絞り出すように呟いた言葉も、やはり震えてしまう。
「…樹さん…心配かけて、すみませんでした。
ありがとうございました」
申し訳なさげに言う久弥の方が、落ち着いている。
まるで子供をあやすようにぎゅっと抱き締められ、久弥の肩にうずめた頭を優しく撫でられた。
怖い思いをしたのは久弥なのに、震えが止まらない自分が情けない。
こんなんだから、頼ってすら貰えなかったのか…?
「…なあ、俺じゃあ頼りにならないか…?
それとも、アイツに惹かれた?」
違う、こんな事が言いたいんじゃない。
久弥を責めたい訳じゃない。
けれども、久弥はこんな俺も受け入れてくれた。
「そんなことないです。オレが意地を張っちゃったのが悪いだけ。
ねぇ、樹さん。抱いて?
アイツに触られた感触、消してほしい…」
もちろん、そのつもりだ。
あんなヤツの感触なんか、思い出したくても思い出せない程に上書きしてやる。
「ああ。
全部塗り替えてやる」
久弥が甘えるようにチュッと口付けてくるから、愛しさが溢れて一層強く抱き締めた。
久弥の手をぎゅっと握り、会社を後にした。
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