アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
12、復讐心 真人side
-
梓馬様が就寝なさった後、俺は母のことを考えていた。
(回想)
母が自殺して数日後、葬式を行った。もちろん俺も喪服を着て葬式に出た。俺の友人や、父の学校の人達が参列していた。そして、俺の復讐相手であるあいつも来ていた。あいつは辛い顔をしておらず、他の参列者と話をしており、後悔や反省の念が感じられなかった。その姿を見た俺はおかしくなりそうなくらい怒りで震えていた。
(誰のせいで死んだと思ってんだよ…!)
今すぐ殴りたかったが、葬式の場だ。落ち着かないと。鷺宮グループの現当主の鷺宮喜一は、母の自殺に心を痛めている様子だった。母の手紙に、『旦那様はお優しい方で、私のことも見てくださっていた』と書いてあったから、俺は旦那様を信頼した。
(…あれ?あそこに居るの…誰?)
周りを見渡すと、俺の目に少年の姿が映し出された。その少年は葬式会場の端で黄昏ていた。俺の心は力強く印を押されたように、その少年が1人黄昏ている姿を見つめていた。そしてその少年が誰なのか知りたくなって近くにいた参列者に尋ねた。
「あの…あそこにいる少年が誰か分かりますか?」
「ん?…あぁ、梓馬くんね。鷺宮梓馬くん」
「鷺宮…梓馬…」
「そう。鷺宮グループの若様だよ」
「そうなんですね。ありがとうございます」
「いえいえ」
鷺宮グループの若様・鷺宮梓馬。俺はこの方にお仕えしたいと強く思った。母と父のためにも、早く高校を卒業して執事学校に入り、一人前の執事になるために頑張ろうと、この瞬間に決めたのだった。
我に返り、あいつの姿がどこにあるのか探していたら場所を離れようとしていた。俺はあいつに気付かれずに尾行を始めた。行き先は会場の中にあるトイレだった。トイレの前に荷物を置く小さいテーブルがあり、それにあいつのカバンが置かれていた。周りに誰もいないことを確認し、俺は予め用意していた手紙をカバンの中に入れた。
この手紙の中身には、1枚の紙が入っている。その紙には、こう書いている。
『お前が篠原百合を殺した。篠原百合の自殺の原因はお前。バラされたくなければ、息子・和人を当主に。そして旦那を補佐役に。最後にお前は、ただ大人しくしていろ』
最後には俺のイニシャル「M」を書いている。誰が書いたのか、あいつには分からないはずだ。
葬式が無事終わり、俺は父と共に家に帰った。父には話していないし、気づかれてはいない。このまま上手くいけば、あいつに復讐が出来る。あとは俺が鷺宮の執事になって、あいつと直接対決するのみだ。
それにしても鷺宮梓馬…あの少年はなぜ1人だったのだろうか。兄の和人さんは隣に居なかった。何か訳があるというのか。もしそうだとしたら気になる存在だ。
2人のためにも頑張らないといけない。俺は気持ちを切り替え、高校卒業を目指して勉強に集中したのだった。
(回想終わり)
いつの間にか俺は眠っていたようだ。
俺の復讐に梓馬様には関わって欲しくない。だから俺は、本館にいた梓馬様を別院に移して欲しいと旦那様に申し出た。もちろん理由は話していない。別の理由で承諾してくださった。旦那様には感謝の気持ちでいっぱいだ。…だというのに俺は…罪を犯そうとしている。いや、これでいいんだ。旦那様、申し訳ございません。恩を仇で返すような私を、どうかお許しください。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
14 / 24