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水音と嬌声、それから律動までもが不規則に奏で続けている。
それを打ち破るように、下に組み敷いている柳瀬にキスをしようとする。
「っはぁ・・・・・・っおい、キスはオプションだ」勢いに任せた一条の口を手で塞ぎながら、柳瀬は頬を火照らせ情の流れをせき止めた。
迫りくる絶頂に架橋を迎えていることを知るが、一条はまだどうしてもその迎えに応じたくなかった。
「柳瀬っ、僕にくらいキスはサービスでいいんじゃない?」
「・・・・・・んぁ! んでだよっ、っ」
「だって、僕が一番の常連さんでしょ? だったら、VIP扱いくらいしてくれても」
「っ、てめ、俺が俺を安売りすんのはいいけど、っ、一条に安売りしてくれなん、て言われてもムカつく」
「あ、ごめんね、そういうつもりで言ったんじゃないよ。よく、僕と寝てくれるし、一番心を許してくれてるのかなって思うんだ。だから、キス、いいかなって」
「っ、バカなこと言ってんじゃねぇ」一条の下で睨む。頬は紅く上気し、色欲の色を帯びている柳瀬に生唾を飲み込んで、理性さえも嚥下してしまう。
ピストンで打ち付け、抗えない興奮を柳瀬にぶつける。それに応えるように嬌声も大きくなっていく。
だが、柳瀬と一条は気づいている。
情事が終わり、柳瀬は身も清めず布団を被る。四月のまだ寒い夜を一条の布団だろうが構わず使った。
「柳瀬、はい」
一条が渡した複数の紙幣。しっかりと枚数を数えて「これ、多い」一条にはみだした分を返そうと握った紙幣を突き出す。
「んーん、それで合ってるよ」
握られた紙幣の腕を掴み、柳瀬を引き寄せ唇をあてがった。
触れるだけの、悦楽もないキス。
「僕、忘れてないからね」
「・・・・・・ま、まぁ金払ってるからいいけど」
「ウリじゃなきゃ、何も許してくれないんだ」
「金に困ってるだけだ」
再度布団にくるまって、朝までの残り少ない睡眠時間を貪り始めた。
ものの数分で眠りについた柳瀬の頭をひとしきり撫でた後、キャビネットの上においてあるボトルの酒を直飲みで一気に飲み干す。
ウリでしか心は愚か、身体すらも誰かに委ねられない雁字搦めの門扉に立つ一条はどうすることもできず、こうして金を渡すことで柳瀬の強固な扉を見守ることしかできない。
こじ開けようとすれば、以前柳瀬と関係を持っていた客のように、あっさりと見限られ別の客を漁るだろう。
だからこそ、見守りながら柳瀬と関係を一番長く続けてきた一条は、この現状を打破したいを思っていても、実際は柳瀬の出す条件を飲んでいるだけ。そんな都合のいい男に成り下がっている状況に、酒を飲まずにはいられなかった。
ウォッカのボトルを早々に空にすると、いい感じに眠気が襲ってくる。アルコール度数の高さも、金でしか柳瀬を癒せない不甲斐なさや、キスも許してくれない完全な娼婦と客の関係でしかない現実を忘れさせようとしてくれる。
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