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死の王の帰還
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屋敷に着いたのは真夜中だった。
門の前まで来ると錆び付いた門は馬車を出迎えるようにひとりでに開いた。
でも、それが勝手に開いたのではないことはすぐに分かった。
馬車の窓から外を覗くと何人かのアンデッドやゴースト達が場車の近くに集まってきているのだ。
「ドストミウル!皆、復活してるよ!」
「うむ、まだ全員という訳では無いだろうがそのうちまた皆揃うだろう。」
嬉しかった。
今まで本当の廃墟になっていた屋敷に皆戻ってきてくれたんだ。一人で寂しく暮らしていたあの家に皆帰ってきてくれた。
馬車が止まるとすぐに俺は外に出た。
「おかえりなさいませ旦那様。」
皆口々に王の帰還を喜んだ。
ゴーストは飛び回り、ゾンビ達は腕がちぎれるほど飛び跳ねていた。
出迎えの先頭に並んでいた使用人達のなかから、一人がひとつ前に踏み出した。
使用人のリーダー、執事長のヂャパスだ。
「おかえりなさいませ旦那様、ご復活おめでとうございます。貴方様の帰還、アンデッド族一同心よりお待ちしておりました。そして、カノル...よく頑張ったな、おかえり。」
そう改めてこちらを向いて言われたら急に嬉しさやら懐かしさやらで溢れた感情が一気に涙になって溢れ出した。
「じいさん...」
カノルは霞む視界の中ゆっくりとヂャパスに歩み寄りその肩を抱きしめた。
「俺、じいさんが色々残してくれなかったら...本当こんなに耐えられなかったよ。ありがとな、ありがとうじいさん。」
「辛かったろう。よく頑張って生きててくれた。礼を言うのはこちらの方じゃ。ドストミウル様を復活に導いてくれてありがとう。」
泣きじゃくるカノルの後ろにドストミウルはそっと近寄った。
「世話をかけたようだヂャパス、カノルにお前に感謝するようにと酷く釘を刺されてしまった。」
「いいえ、当然の事をしたまでです。何卒これからもアンデッド族を導く王として我々をお導きください。」
ヂャパスはカノルを抱きしめたまま頭を垂れた。
「うむ。」
「うむじゃねえだろ、ったく!ちゃんとありがとうくらい言えよ、偉そうにふんぞり返ってんじゃねえぞこのポンコツ王!あーあ、俺じいさんと結婚した方が絶対幸せになれる気がする。」
「かっ、カノル!?」
焦ったようにドストミウルはカノルの肩に手を伸ばした。
「そうやって旦那様をからかうのも程々にしなさい。」
「はいはい、わーったよ。」
カノルはヂャパスから離れると素直にそう言った。
「さあ、皆屋敷に戻ろう。」
ドストミウルが広く声をかけると、アンデッド達は散り散りに屋敷に入っていった。
続いて屋敷の中に戻ろうとするカノルと足並みを合わせて進むドストミウルは、カノルの嬉しそうな横顔を見ていた。
「おかえり、カノル。」
そう声をかけられるとカノルもドストミウルを見つめて笑った。
「ああ、おかえりなドストミウル。」
屋敷はたちまち賑わいのある、アンデッド達の住処へと戻ったのであった。
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