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帰ってきた日常①
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ドストミウルが屋敷に戻ってから、すぐに以前のような騒がしく汚く虫の多い化け物の巣窟へと戻った。
俺は相変わらず掃除道具を握り、真面目だったり不真面目だったりしながら虫だけは殺さないように仕事をしている。
今日はドストミウルの部屋の前の廊下を掃除していたら、珍しく人の姿をしたゲイルにあった。
彼は俺を見つけると笑顔で走りよってきた。
「カノル、お前も無事で何よりだ!我もようやく魔力が万全に整ってきたのでな、主にご復活のお祝いをと思い参上したのだ。」
「割と起きるの遅い方だったんじゃん?でもなんか地下以外でゲイルを見るのって珍しい気するな。」
「基本的には持ち場は離れないからな。いちいち人の姿にならなければ、屋敷は狭くて壊してしまうし色々面倒なのだ。」
確かにゲイルの本当の姿は異様にでかい。あの無意味なくらいに広い地下迷宮出なければ動きにくそうだ。
「我はまたお前に会えて嬉しい。」
そう言ってゲイルはカノルの手を握った。
「おう、そのうちまたサボりに行くな!」
カノルはニカッとふざけた笑いを浮かべたが、ゲイルは優しく目を細めていた。
「ドストミウルなら部屋にいると思うぜ。気まぐれでどっか行く前に話して来いよ。」
「ああ、そうしよう。それではまただカノル。」
カノルはゲイルに軽く手を振った。
それから上の階の廊下の掃除に移った。毎日掃除にしているし、頻繁に使うわけじゃないここの廊下は掃除の必要なんかないって思うくらい綺麗だ。
そうは言っても執事長に言わせれば掃除は毎日する事が大切であり、たとえ必要のない労力だとしても主を思う行動の1つとして体を動かす事が大事、らしい。
はっきり言ってつまり無駄じゃんて思う。
がっつりサボるのはまずいので、ゆるめに掃き掃除をする。これは割と執事長にもバレない。
そうやってゆるく手を動かしていると、気配を感じて階段の方を見た。
「何やってんの?」
そこにはドストミウルがいた。
目が合うとすっとこちらに近寄ってきた。
「いや、特に用事はないのだが。手が空いたのでな。」
「世界が魔王に支配されて、仕事が少ないしイージーなのは分かるけど、フラフラしてんのもどうかと思うぞ。」
そう、勇者なき今世界は魔王の支配が強くなっている。
世界中には以前より大量の魔王の手下がうろつき、小さな村は襲われまくり、王都だって常に気を張りその支配下に落ちないよう常に超警戒状態だ。
アンデッド族の仲間をやっている俺からしたら人間が毎日震えて生活している事なんて知ったこっちゃない。むしろざまあみやがれと、内心笑っている。
そのかいあってドストミウルの仕事は以前より極端に減ったらしい。前はよく屋敷を空けていたが、今は出かけている方が珍しいくらいだ。
「仕事もなく、部屋に一人でいるのも退屈でな...それに」
「それに?」
「君が近くに居ないと、不安に思う所があるのだ。また君と離れてしまう時が来るのではと不覚にも考え込んでしまう。」
カノルはそれを聞いて一段と不満そうな顔をした。
「よくその気持ちを噛み締めておきやがれ。俺が一人だった時どんな気持ちだったか頭が狂う程実感してればいいさ!」
「その通りだ、きっと君は今の私より心苦しい時を過ごした。私はこうやって君に会いに来れても、君は私に会いたくても会えなかった。」
「そゆこと。じゃあ苦い思いを抱えながらくるっとまわって部屋に戻ってくれる?仕事の邪魔だから。」
ドストミウルは少し考えた後、ふいに不服そうな顔のカノルの口元に自らの口元を寄せた。
「あのっ...」
「愛しているよ、カノル。仕事が終わったら早く戻ってきておくれ。」
一段と優しくそう囁かれて、ドストミウルが離れてもカノルはしばらく動きを止めていた。
その姿が見えなくなってから、数度瞬きをしてゆっくりと息を吐き出した。
「ずるくねぇ?そういうの。」
耳まで漏れなく赤面したカノルの呟きは誰もいない廊下に消えた。
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