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帰ってきた日常②
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仕事が終わって部屋に戻ると、銀髪のちょび髭オヤジとドストミウルが部屋で楽しそうに話していた。
そういえば、ドストミウルが復活してからイフを見たは初めてかもしれない。
イフもこちらに気がつくと立ち上がって駆け寄ってきた。
「やあー!やあー!カノル!久しいネ、元気だったかい?背ぇのびた?」
やけくそなハイテンションで抱きしめられる。酒臭いからたぶん酔っている。いや、酔ってなくてもこのテンションだった気もする。
「ああ、久しぶり。イフも元気そうで良かったよ。ヴァンパイア族も皆復活した?」
「ああほとんど完全復活と言ってもいいくらいには順調だねぇ。今回は君の活躍もあったと聞いてるし、君には感謝してるヨ。」
「大したことはしてないけど、お礼なら受け取るよ。」
「ドストミウルからは何か御褒美もらった?今度は子供でも設ける?あ〜世の中には男の体を妊娠できるように作り変えられるモンスターもいるらしいヨ?どうどう?」
「やめろ!!俺は女じゃない!!子供は好きだけど、産むなんて冗談じゃねぇぞ!」
俺はまとわりついていたイフを蹴り飛ばした。
ふざけた話を持ってくるのはいつもの事だけど、こういう話をすると真に受けるやつもいるから困る。
「カノルと私の子か...」
頭が空っぽな死の王とかね。
「頼まれたって何したってそれだけはぜってーしないからな!産みたきゃアンタが産めよ!」
「アンデッドを作り出す事は出来ても、孕むことは出来ないからな。難しい問題だ。」
問題でもなんでもない。冗談で盛り上がってるだけだろ。しょーもないおっさん達の会話だな、と心の中でツッコミを入れる。
とはいえ、イフもそろうと部屋も一層と賑やかになって本当に今までの生活が戻ってきたのだと嬉しくも思う。
「めでたいしカノルも一杯どう?」
「んー、ジュースでよければ付き合うけど。」
「しょーがないなぁ。」
イフは俺の肩に手を回してドストミウルのいるソファーへと促した。
仕事が暇なおじさん達はこうして毎日やかましい晩酌でもするのだろうか。そう思うと非常に面倒くさい気もするが、無音の部屋よりは絶体に良い。
日が昇る前にはイフも自分の住処へと帰って行った。
ドストミウルと二人、部屋で少し話をしてからベッドで休む事にした。
「相変わらずやかましいよな、イフの奴。来る頻度増えると思う?」
「増えるだろうな、彼は元々退屈なのは苦手だ。」
横になった俺にドストミウルは布団をかけてくれた。
「まあ、その方がアンタも退屈しないしいいかもね。」
「そうだな。」
ドストミウルも横に並んで布団にもぐりこんだ。
「君に嫌がられない様私も節度を保たなければかな。」
「仕事中の事気にしてんの?」
「君だって冗談で言ったわけではなかろう。」
「仕事中はそうだけど...」
「分かっているよ。君との約束だ。」
ドストミウルが復活してから、俺は褒美の代わりというかひとつの約束をしてもらった。
「眠る時は一緒に居よう。」
「急用がなければね。」
ドストミウルが細い指でカノルの頬を撫でると、カノルは目を細めて嬉しそうに微笑んだ。
「どこにも行かないでね。」
「ああ、もちろんだ。私は君を愛しているからな。」
「うん、ずっと傍に居ろよな。」
眠気と共に少し上がった体温を、冷たい胸の骨に寄せる。布団の上から抱き寄せられると、自然と体の力が抜けるのが分かった。少しづつ自分の体温で温まる骨の体に有るはずの無い温もりを感じていた。
狂った道を歩き続ける俺はこの偽りの温もりに頼る他ないのだ。
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