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大切な貴方へⅡ②
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花を摘み取った俺達はバーバラの部屋に行き、花にちょっとした飾り付けをした。ビアリーは楽しんで包み紙とリボンを選んでいたし、ちょっとした工作気分だ。
「旦那様がどれだけ喜ぶか楽しみねぇ!」
バーバラがこちらを見て微笑んだが、俺は苦笑いを浮かべた。
「花くらいでそんな喜ぶかね、あの王サマは」
「何言ってるのよ!カノルちゃんとビアリーちゃんから貰って嬉しくないものなんてあるものですか。...ああ、照れくさいのね。」
「...」
不機嫌な顔をしてほんわか婆さんを睨んでいたら、ビアリーに袖を摘まれた。
「なに?完成?」
先程摘んだ花は、白い包み紙とちょっと歪に結ばれた紫色のリボンを纏っていた。
「よく出来てんじゃん、俺よりセンスありそう。」
しゃがんで笑いかけるとビアリーは誇らしげに鼻から息を吹いた。
「じゃあ、お父様に渡しに行くか。」
ビアリーは頷いてから、少し首を傾げた。
「それ、パパが渡すの?それとも私が渡すの?ってビアリーちゃんが聞いてるわよ。」
すかさずバーバラは通訳をした。
「俺も一緒に行くけどビアが渡して」
そう聞くとビアリーは力強く頷いた。
部屋に戻るとドストミウルは部屋の真ん中でヂャパスと話していた。部屋に戻った俺達を見てすぐに話を止めたあたり特別重要な内容では無かったのだろう。
ビアリーはすぐにドストミウルに駆け寄ると、すぐに花を差し出した。
「これは...」
「ビアリーと俺から。花を見つけたのもその包装したのもビアだけどね。」
ドストミウルは花を受け取ってからビアリーを抱き抱えると俺の方へと近づいてきた。そしてゆっくりと体を寄せると背中に手を回し抱き寄せられた。
「ありがとうカノル、ビアリー。」
「野花で喜ぶなんて安っぽい王サマ。」
「私が喜ぶか心配だったか?」
「...」
その見透かされたような質問にカノルは訝しげな顔でドストミウルを見た。
「気の利く娘を授かって私は運が良かった。」
俺はギョッとして体を離すと隣でドストミウルに抱きついている娘をみた。
「ビアリー!」
ビアリーはクスクスと面白そうに笑った。
そりゃあ照れくさいし、喜んでくれるか心配もした。でも、男としては何気ない顔でさっぱりと渡してしまいたいものだ。ビアリーがどの程度俺の心情を悟ってどんな風にドストミウルに伝えたかは分からないが、なんとも恥ずかしい気分だ。
「私は十二分に嬉しいぞ、カノル。」
「そすか、まあ、それなら良かったよ。でもこんな物で喜ぶなんて死の王らしくはないよね。」
「この瞬間に死の王でいる必要は無い。」
カノルが上目で得意げに睨むが、ドストミウルはとても落ち着いた声で答えた。
「じゃあなんなのさ?」
「君を愛する者、という定義さえあれば私は何者である必要もない。」
カノルは一瞬視線を落とすとビアリーの方に顔を向けた。
「...お父様の言ってる事ちょっとよくわかんないな。な、ビアリー?」
ビアリーは少し目を開いてからカノルを真似して首を傾げた。
夜明けが近づきビアリーが眠った後、ドストミウルはヂャパスが花瓶に生けてくれた贈り物の花を見つめていた。
「骸骨が花眺めてるなんて滑稽」
シャワーから上がってきたカノルはからかい気味にドストミウルにそう声をかけた。
「素敵な贈り物だ。」
「すぐ枯れちゃうけどね。」
「その儚さを楽しむ物なのかもしれない...君と同じだ。」
カノルはソファーに座り、顔だけでドストミウルを見た。
「その花みたいに綺麗さも可愛げもなくて悪かったね。あと俺はそんなに弱くない。」
ドストミウルは花の前を離れカノルの目の前へと飛んできた。そしてカノルの首元に自らの長細い指を当てた。
「ここを掻き切れば一瞬の事であろう。」
「今切ってくれるの?」
「それはしない。」
「臆病者」
「枯らすには早すぎる。」
「欲張りだなあ、王サマは」
ドストミウルは首から顎に指の位置を変え、口元を寄せた。
「ありがとう、カノル。君の愛を受け取れて嬉しかった。」
「俺たち、のね。」
「君のものが少しでも入っているならばそれでいいのだ。」
ドストミウルはその骨の体に生身の体温を感じたくてカノルを抱き寄せた。
「愛しているよ」
「はいはい」
カノルひんやりした固い骨に笑いながら頬を寄せた。
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