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同盟パーティー!②
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散々ドストミウルと揉めた結果、俺は使用人としておとなしくパーティーに参加する権利を勝ち取った。
伴侶としてパーティー中にみんなの前で紹介したいとかほざき出した時には、弓で撃ち抜いてやろうかと思った程だ。
もちろん、ドストミウルとそういう関係である事が嫌な訳では無い。ただなんと言うか、大々的にして欲しくないというか、照れくさいというか...俺的にはそっとしておいて欲しい事柄だったりする。誰かにいちいち報告しなくったって俺達はそういう関係だ。
当日、日が暮れると賑やかな屋敷は今日は一層騒がしかった。
イフを筆頭に空からたくさんのヴァンパイア達がドストミウル邸に舞い降りた。
珍しく正面の玄関から尋ねてきたヴァンパイアの王は、これまた珍しく正面玄関で出迎えたアンデッドの王に挨拶と握手を交わした。
「いやぁ〜、今年もこの日が来たネ!お招きありがとう。」
「ようこそヴァンパイア諸君、ゆっくり楽しんでくれ。」
俺は料理を用意しながら、そんな二人の様子を遠くから眺めていた。
「本当にいいの?仕事してて。」
隣で皿を並べているダティアリアが俺の方を見てそういった。
「いいんだって。他の使用人だって皆仕事してんのに俺だけ楽しんでちゃ不公平だろ。」
「そうだけど...もったいないかなって。」
「来年はあっちでやるんだろ、そんときは仕事しなくていい訳だしそん時楽しむよ。」
「そうだね。」
カノルが頑固なのは知っているのでダティアリアはそれ以上言うのをやめた。
パーティーが始まるとそれぞれの王が、同盟の強化とそれぞれの種族の繁栄を称える挨拶を述べた。 挨拶を終えると皆が歓喜し、拍手で会場は一層盛り上がった。
挨拶が終わると、アンデッドとヴァンパイアは自由にパーティーを楽しみ始める。
ゴースト達は壊れかけの楽器で上手くもない音楽を演奏し始めた。
アンデッドとヴァンパイアは久しぶりに会う異種の友と握手をし一緒に酒を飲みかわしたり、それぞれの王に挨拶をしに行ったり、楽しそうに笑いあったりしている。
そんな様子を横目に、皆それなりに楽しんでいるんだなと思いながら広間のカーテン裏方に入り飲み物や食べ物の準備をする。
屋敷のシェフが腕によりをかけた料理のようだが、アンデッドとヴァンパイア用の食事だ。見た目は綺麗で美味そうだが、俺は絶対に手をつけたくはない。
補充用の酒を用意していると、カーテンの表側に誰かがいるようで話し声が聞こえた。
「なあ、ドストミウル様の嫁ってどんなやつなんだろうな。人間の男なんだろ?」
「やめとけって、ギャリアーノ様も言ってたろ下手に話してると死の王に消されるぞ。」
決して聞き耳を立てていた訳では無いが、どう聞いても自分の話をされているようで仕事の手を止めてしまった。聞き覚えのない声と内容から推察すると多分イフの手下のヴァンパイアだと思われる。
「つっても、今日もいるかもしれないし気になるだろ。やっぱり妾みたいなもんで所詮おもちゃみたいな扱われ方してんのかな。」
「まあ確かに気にはなるけどな。溺愛されてるって話だし、めちゃくちゃ美少年なのかな!」
別に自分の悪口とか変な噂話を気にするほど俺は女々しくはないので、こっそり面白話題程度に聞いてみることにした。
…とりあえず、美少年じゃなくて悪かったな!
「どうせ遊ばれてから殺されるんじゃないのか。」
まあ俺もとっととそうしてくれてもいいかなって思う所もあるんだけど、なかなかそういう訳にもいかないんだよなと心の中で会話に混ざっていた。
するとツカツカと鋭いヒールの音が近づいて来るのが聞こえた。
「ちょっと、そこの冴えないヴァンパイア男子、邪魔だからどいて貰えるかしら?」
この見下すような偉そうな物言いをする女の声を俺は知っていた。アンデッドの使用人の一人ベトルイーナだ。
「悪いなメイドさん。ねえ、ついでに聞きたいんだけどドストミウル様の奥さんて今日はいるの?」
くすくすと笑いながらふざけたようにヴァンパイアは聞いた。
ベトルイーナは勢いよくカーテンを開けた。
「ほら、いるじゃないあんた達の後ろに。...ねえ、カノル?」
愉快とでも言うように口の端に笑みを浮かべた金髪のメイドと目が合う。俺は罰が悪そうに顔を引き攣らせたヴァンパイア達に苦笑いを浮かべながら小さく手を振った。
「いや盗み聞きとかじゃなくて、たまたま聞こえただけで何とも思ってないから。とりあえず...ご想像の美少年じゃなくて悪かったな。」
ヴァンパイア達は余計に顔を歪めた。
「すっ、すまない。そういうつもりじゃなかったんだ、どうか王には内密にしてください!」
「オレもつい出来心で、お願いだから殺さないで!!」
「ああ、別にいちいち告げ口とか面倒くせえ事しねーから。とりあえずそこ料理出すのに邪魔だからどいてくれる?」
ヴァンパイア達は焦りながら何度か謝ると、背中を小さくして去っていってしまった。
ベトルイーナはそんなヴァンパイアの後ろ姿を見てさも満足気に笑った。
「相変わらず性悪女だな。」
「はあ?盗み聞きしてるあんたも十分性悪じゃなくて?」
ベトルイーナはばっちりメイクでこしらえた眉を上げてこちらを見た。
ベトルイーナは使用人の中でも人間らしい方で、簡単に言うと話好きでガラの悪いギャルの様な女だ。ゾンビの癖に濃い化粧をするし、アクセサリーを身につけているし、膝上丈のタイトなスカートをはいている。決して不真面目な訳では無いが、まあ適当な所はある。
「ぶ男のくせに人のこと詮索するなんてナンセンスよね。イケメンだったらもう少し優しくしてあげたんだけど。」
「顔面偏差値で差別するのかよ、こわっ。てか何、今の俺の事助けてくれた感じ?」
「ううん、アタシが楽しいからああいう演出しただけ。馬鹿みたいで面白かったでしょあいつら。でも、あんたも気にしない事ね。」
「残念ながらああいうのを気にする程デリケートじゃなくてね。」
「そうだと思った...なんであんたってそんなのであの素敵な旦那様と上手くやれてるの?アタシ毎回不思議に思うわ。」
ベトルイーナはドストミウルに憧れに近い好意を持っている。だからって俺に嫌悪感を持ったりはしていない、ただとても羨ましがられる。
「なんでだろうね、ドストミウルに聞いてみれば?」
「直接聞くなんて、恐れ多くて出来ないわ。私は旦那様を遠くから眺めてるだけでいいの。」
「女子らしい事言うじゃん、年増のくせに。」
いきなり飛んできたヒールが顎に見事にヒットした。
俺の動体視力を無視するこの速さ、もうしばらくはわざと地雷を踏むのは避けようと思った。
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