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カノルは◯◯!?②
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使用人の一人、ベトルイーナは主君の部屋の近くの廊下を掃除していた。
ベトルイーナにとって主君であるドストミウルは憧れの存在だ。強さと品格と威厳、王としての才能を全てもちあわせた最高の主。ベトルイーナはその主に仕え従える幸せを日々感じ仕事に務めている。
仕事が一区切りついて、ほうきからモップに切り替えたい所だったけれど、近くにいる使用人仲間から借りなければいけない。
辺りを見回したら丁度カノルがモップを手にこちらに向かってきていた。
「ねえーカノル、それ貸してくれない?」
「あぁっ?」
カノルは目の前まで来ると不機嫌そうにそう言った。
「なによ、その不機嫌そうな態度。」
「不機嫌なんだよ!」
ベトルイーナは睨んできたカノルの顔をじっと見つめた。
血色のいい頬、少し腫れぼったい目元、髪の一部が乱れている。
「はは〜ん、さては...」
ベトルイーナの視線はカノルの首元で止まった。
カノルは焦ったように襟を引き上げた。
「まだまだ夜はこれからだって言うのにね〜」
そうからかうように微笑むと、カノルは驚いたように目を丸くして赤面した。
「ばっ、てめぇ誰にも言うなよ!ほら、これくれてやるから」
カノルはそう言って投げるようにモップを渡すと、足早に去っていってしまった。
ドストミウル様がカノルを好いていると知っていても、どうしてあんな奴が好きなんだろうと疑問を抱いてしまう。
しかし、カノルもカノルだ。堂々としていれば変な詮索もしないし、バレないというのに何故ああも分かりやすく動揺するのか。
恋愛経験が少そうなお子ちゃまではあるけど...
ベトルイーナは少し考えてひとつの面白い答えに辿り着いたが確証は無い。
まさか、ねぇ。
でも、確かめて見るのも悪くないかも。
ベトルイーナは廊下の端でひとりで不敵な笑みを浮かべた。
仕事が終わり使用人達が散り散りになる。
広間の隅でまだ不機嫌そうな顔のまま座り込んでいたカノルに、ベトルイーナは声をかけた。
「あの後は大丈夫だったみたいね?」
「そうですね。ご心配ありがとうございます。」
カノルは座ったまま頬杖をついて、近寄ってきたベトルイーナに視線も向けずに答えた。
「部屋に戻らないの?」
そう聞くとカノルはベトルイーナを上目で睨んだ。
「戻りたくないの。」
「あっそ。」
ぶっきらぼうな態度に多少のイラつきは覚えたものの、ベトルイーナは表情を緩めてカノルの顔を覗き込んだ。
「...ねえねえ、カノルって人間の街にいた時ってモテた?」
話題が変わったのでカノルは睨むのをやめて数回瞬きをした。
「モテ...んー、まあそれなりに。」
カノルは得意げにニヤリと笑う。
「じゃあ告白されたりとかはザラよね?」
「...まあ、無くはないかな!」
「女の子とお出かけもよくしてた?」
「...たまにはね。」
「今までの彼女の人数は?」
「...ちゃんと彼女とか作る主義じゃなくて」
「でも、さすがに女性経験はあるわよね?」
「ばっ、無いわけねーだろ!?」
「ちなみに初めてはどんな子だったのよ?」
「...」
カノルは明らかに硬直して、口元を歪ませていた。
「やっぱ童貞なんだ。」
「うっせぇな!!そういうのに当てる時間と興味が無かっただけ!!」
「嘘ついて隠そうとするあたりがダサいわよね。」
「...それは、その、」
「童貞、非処女」
「っ!!もう黙れよこの性悪女!!好きでこうなったわけじゃねぇっての!!」
カノルは威勢よく叫んだもののその顔は湯気でも出そうなほど赤くなっていた。
「ドストミウル様が好きだからこうなったんでしょ?」
「...」
カノルは口元を歪ませて噤んだまま、目頭に力を入れこちらを見ていた。言い返したくても真実を否定することが出来ないもどかしさを抱いているのだろう。
「はいはい、今日はこの辺でやめたげるわ。じゃ、お休みカノルくん♡」
ベトルイーナはカノルにウインクを向けると、体を翻しさっさと自室へ向かって歩き出した。
思った通りの経験の甘さ、そして図星をつかれて反論のしようも無いあの表情。
もっと張合いがあっても良かったけれど、今日は単純に疑問をスムーズに晴らせた事で気分が良かった。
初めての人がドストミウル様なんて、色々拗らせてしまいそうで可哀想とは思ったが私にとっては主様が納得しているならそれでいい事...
大概ふざけた人間だと初めの頃は思っていたけど、親愛なるドストミウル様の相手としてなんだかんだアタシも認めているみたい。
もちろん恋愛感情では無いにしろ、カノルの事も気に入っている。
「童貞って本当に遊びがいがあるわ〜」
ベトルイーナは満足そうにほくそ笑んだ。
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