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おばけ屋敷の宝②
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鬱蒼と生い茂る暗い森をかき分けて少年は走り続けていた。先程目の前に飛び出てきた骨の化け物を見ても尚、歩みを止めなかったのは人生を掛けた目的があるからだった。
━━━━━森の奥の化け物屋敷には抱えきれないほどの財宝がある。
と、そんな信憑性の薄い噂を信じきったのはそれ以外に縋るものがなかったからだろう。
息が上がりようやく寒さが気にならなくなった頃、小さなライトを手に少年は大きな門の前に辿り着いていた。
緊張する体を誤魔化そうと、数回胸を強く叩いてから少年は1歩前に進んだ。
玄関の扉を押し開けるとドアの擦れた音が悲鳴のように響き渡る。
中に足を踏み入れ真っ暗で気配のない部屋の中をライトをで照らす。古びた絨毯に、蜘蛛の巣だらけのシャンデリア、傷だらけの壁、ここが全て新品の部屋だったら何を取っても財宝になりそうだと少年は思った。
「...ぃで...」
うっすらと聞こえた人の声に少年は焦って周りを見回しライトで照らす。
正面を照らした時、そこには同い年位の少女が見えた。少女は可憐に笑うと駆け出して奥にあった扉の辺りで消えた。
少年は唾を飲み込んだ。
手は震えていたし、冷や汗も凄かった。
あれが屋敷の幽霊だったのかと思ったが、あの子自体に恐怖はさほど感じていなかった。
ゆっくりと歩き出し、幽霊のような少女が消えた部屋の扉の前まで来た。そっとドアノブに手をかけ、ゆっくりと回す。恐る恐るドアを開き中をライトで照らすと、小さな部屋の中央には、テーブルとそれを挟むように向かい合う古びたソファーがあった。
「あっ...」
驚いて思わず声を出した少年は、そのソファーに座った先程の少女を見つめていた。
揺れるライトに照らされた少女は青白い顔で少年に優しく微笑みかけた。
「お客様は久しぶりなの。良かったら座ってお話しましょう。」
口元は動かなかったが、向かいのソファーを指す仕草をしたのでその大人びた声は少女のものだと少年は悟った。
「あっ、あの、ごめん。君の家?勝手に...」
少女は尚も微笑んでソファーを指さした。
少年は少女の笑顔で緊張を少し解していた。ゆっくりとソファーに座ると少女を見つめた。
「勝手に入った事は許してあげる。それで、私の家に何のご用?」
少年は唇を噛んだ。
真実を述べるべきか迷ったからだ。財宝が欲しいなどと欲深い事を言って怒らせたら、この笑顔が歪む可能性もある。
「武器はないのね。危害を加えに来たわけじゃない。」
少女は少年の服を隅々まで凝視した。
少年は唾を大きく飲み込んだ。
「金が...居るんだ。」
顎はガクガクと震えた。
少女の顔を見るのが怖くて自らの膝をみていた。
「い、今の生活が...つらくて、抜け出すために金がいる。こっ、ここには財宝があるって聞いて、それで...」
少年は恐る恐る少女の表情を伺う。
少女は無表情だったが、目が合うと口の端をぐっと上げて先程とは違った不気味とすら取れる悪戯そうな笑いを浮かべていた。
「ゲームをしましょう?」
「ゲーム...?」
「そうしたら貴方の望みを叶えてあげる。」
「ほっ、本当に!?」
少年が思わず叫ぶと、少女はゆっくりと席を離れ少年の目の前に立った。
額が付くほど顔を近づけ闇に沈んだ目で少年を見つめた。
「今からひとつも声を出さないで...わかった?」
そう言われて少年は急に背筋が凍るほどの恐怖を覚えた。
少女はにこにこと笑いながらまだ目の前に立っていた。
「ねえ、聞き忘れてたわ。あなたのお名前教えて。」
少女がそう言った。
少年は口を開けようとして思いとどまった。先程少女が言っていた声を出すなという言葉が頭を過ぎったからだ。
でも、聞き忘れたという事は名前を言うだけはまだセーフかもしれない。でももし、もう彼女の言うゲームが始まっていたのなら。少年はそう考えて黙ったまましばらく少女の顔を見つめていた。
少女は不思議な顔をして何度か首を傾げた。まるで教えてくれないの?とでも言うようだ。
沈黙のまま1分程が経って少女が口を開いた。
「ふふふっ、そういうことよ。遊びましょう。鍵を探して一番上の階の割れ窓の前に来て、待ってるわ。」
そう言い残すとくるりとスカートを翻し少女は部屋を出ていった。
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