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おばけ屋敷の宝③
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少女と話をした部屋を出るとクマのように大きなゾンビが声を上げながら追いかけてきた。
ボロボロで軋む廊下には目玉が沢山ころがっていたし、布を被った小さなお化け達に足をすくわれそうになった。
真っ暗闇のなか上から急に物は落ちてくるし、よく分からない悲鳴やうめき声はずっと聞こえてくる。
それでも少女との約束は絶対に守らなくてはと、唇を手で潰すように痛くなる程抑えた。
自分にはもうここに賭けるしかないんだ。望みを叶えてくれると、財宝をくれると約束してくれた少女を信じるしかないのだ。
それが出来なければ、待つのは寂しい死だけだ。
少年はずっとうるさく鳴り続ける心音と、幾度となく行動の邪魔をする手汗を引き連れてたくさんの部屋を回った。
いよいよ探すあてもなくり、階段を登ってみるとそこには一際迫力のある大きなドアがあった。
ドアをそっと押してみると思いの外軽くドアは開き、広く豪華な大部屋のようだった。何かが動く気配もなく、静寂が耳鳴りのように刺さるだけだった。
椅子、テーブル、ソファー、暖炉、それから4人ほどでも寝られそうな大きなベッド。順にライトで照らし鍵の在処を探したがそれらしい物は見当たらなかった。
ふと何かの声のようなものが聞こえて部屋を見回すと、先程なかったはずの場所に見たことのない程大きい骸骨が椅子に座っていた。
少年はゆっくりと近づき、ライトを照らす。
骸骨は後ろに背骨が曲がるほどにもたれかかっており、そのせいであばら骨が花開くように広がっていた。
「...!」
少年は声を出しそうになって歯を食いしばった。
その肋の中に金属のようなものがチラリと光った。鍵だと思ったがすぐ手を伸ばす気にはならなかった。
生き物の歯のようにぱっくりと開いたあばら骨の中には、黒いモヤが渦巻いており、そのモヤの中には無数の赤い人の顔のような物が浮かんでは消えてゆく。その顔達はどれも悲痛な表情を浮かべ助けを求めるように赤い小枝のような手を伸ばしては消えてゆく。
そして彼ら言っている、「…イタイイタイ」、「…タスケテ」、「…コッチニオイデ」、呻きながらこちらを見ている。
気分が悪くなって視線を逸らして目をつぶって耳を塞いだ。それなのにその呻き声が頭の中に反響してうるさく鳴り響いた。
静かにしてくれ、黙ってくれ、頭がおかしくなる、うるさい、黙れ!
叫ぼうとした途端少女の顔が頭を過ぎった。そして、帰りたくない場所と痛み。
尚も呪われたように頭は痛んだが、少年はゆっくりと顔を上げて目の前の骸骨に向き直った。
もっと嫌で苦しい思いは散々じゃないか。
少年は覚悟を決めて肋の中心に腕を突っ込んだ。
指先に当たった固いものを掴んですぐに引き出す。ライトで握った物を照らすとそれは確かに古びた鍵だった。
気がつくと目前にいた骸骨は消失し、頭に鳴り響いた呻き声は消えて、少年と静寂だけが部屋に残っていた。
ゆっくり階段を登りきると、その正面には星空の見える大きな割れた窓があった。
疲れ果てた足で、一歩一歩近づくと暗がりからあの少女が出てきた。
少年は少女の前にたどり着くと、握りしめていた拳を解いて中にある鍵を見せた。
「よく、がんばったね。ゲームはおしまい。貴方の勝ちよ。」
「よ、かったぁ。」
その言葉に気が抜けた少年は膝をつくとその場にうずくまるように倒れた。肩を震わせて、大きな声を出して泣き出していた。
「辛かったのね。こんな怖いことが続いても貴方は乗り越えられたんだもの、大丈夫よ、あの家を出ても一人で生きていけるわ。」
自分の嗚咽の中、少女の声は透き通るように体に染みた。
気がつくと少年は森の中で倒れていた。
あたりはまだ暗いが、うっすらと朝日の気配がただよう。
「あっ...」
少年の手には抱えきれないくらい大きな袋が握られており、そのずっしりと思い袋の中には見たこともないような大量の金貨が詰まっていた。
「おばけ屋敷の財宝、本当にあったんだ!やった、僕はこれで自由になれる!」
少年は金貨を握りながら、あの少女を思い出していた。
「たまにはいいでしょ?慈善事業も。」
眠そうに欠伸をするビアリーに膝枕をしながらカノルは得意げに笑った。
「あれが慈善事業だと言えるならね。」
「ちょっとしたイベントさ。みんな楽しそうやってたよ、な、ビアリー?」
ビアリーはうんうんと頷く。
「あれはどこからか逃げ出した奴隷だ。あれほどの大金をやったところで上手く使えるかは分からんぞ。」
「元々人から奪った金のくせによく言うぜ。映画でも出来そうだったでしょ?主演ビアリー、声ダディアリア、監督カノル様ってね!」
ビアリーはカノルの膝から起き上がると目をこすって自分の部屋を指さした。
「おやすみビアリー、今日はありがとう。素敵な女優さんだったたぜ。また明日な。」
カノルはビアリーの額に軽くキスすると、寝室に向かうビアリーに手を振った。
ビアリーの部屋のドアが閉まると、ドストミウルはカノルの隣に座った。
「では監督。出演料はおいくら貰えるのかね。」
ドストミウルは指先でカノルの膝をとんとんと叩いた。
「はーん、金持ちのくせに金銭要求とはケチな野郎。」
カノルはドストミウルの顔を呆れたように見つめた。
「払えないのであれば、体で払ってもらっても構わないがね。」
「うわ、最悪だよこいつ。」
カノルは苦笑いを浮かべた。
「君はこの屋敷の1番の宝だからね。」
カノルは顎を掻いてから、ドストミウルの口元にそっと唇を当てた。
「とりあえずこんなもんで?」
「ずいぶん少ない前金だ。」
ドストミウルはカノルを抱えると、ベッドまで飛んでのしかかった。
「君と会う前の私なら今日の様な事はしなかっただろう。興味深い経験だったよ、君とのいい思い出だ。」
「上手くやれるといいな、あのガキ。」
「うむ。そうだな。」
そう頷いてからドストミウルは一番の宝に優しくキスをした。
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