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Look at me !
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景色が闇に覆われ魔法動力の人工的な光が星よりも輝くようになった頃。
少年は賑わいのある大通りで見つけた客を人気の少ない狭い路地まで誘い込んだ。ただでさえ魔王とやらのせいで不景気は進むご時世だ、元々万人に需要のある仕事ではない故に話に乗った客は神様にさえ見えてくる。
客を壁に押し付け首元に手を回す。
やや強引に商売をしようとしたせいか、顔を近づけるのに抵抗される。それならと思いベルトに手をかける。
「おじさん、初めてじゃないでしょ?このご時世だし値は張るけどよくしてあげるから。」
片手で早々外したベルトの隙間から手を滑り込ませる。めんどくさそうな客でも無さそうだし、丁寧に相手をしてやってもいいが時間は惜しい。
身体を寄せ少しでも気持ちを煽ろうとすると、すぐ近くで靴音がした。
そちらを向くと1人の人影がじっとこちらを見ていた。
「てめぇがショタコンなのは知ってたけど、こんな身売りのガキに手ぇ出す程飢えてたとは知らなかったぜ。キモさ通り越して寒気がする。」
その人影が見つめていたのはこちらではなく客の男の方だった。
「誤解だカノル。私はそんなつもりは無い、彼に強引に引かれ来ただけだ。」
金髪の品の良さそうな中年男は困ったように笑いながら、カノルと呼ばれた人影にそう言った。
「お兄さんは、おじさんの友達?」
少年は興味本位で話に割ってはいる。あわよくば二人とも客に出来ればとも考える部分もあった。
「彼は私の妻だ。」
「妻っうんじゃねえって何度言えばわかるんだよ!!」
金髪の男が応えると、カノルは声を荒らげてそう反論した。
「最愛の人だ。すぐに断らなくて悪かった、君の仕事の早さにもなかなかだったよ。」
客はそう言うとやんわりと少年と体を離した。
「ガキ、お前もそんなやつの相手しなくて正解だったよ。身体おかしくしてしばらくまともに仕事出来なくなるからな。」
カノルが少年そう言うと、少年は悪戯そうに笑った。
「じゃあお兄さんは毎日のようにおじさんの大っきいのに身体めちゃくちゃにされてるんだね。羨ましいな〜」
「...」
カノルは少年を睨み返した。
「君はよく墓穴を掘るね。」
「うっせえ、あんたの相手しようとしてくれた誠意に応えて金くらい渡してやれば?」
カノルはそう言うと、背を向けて大通りへとゆっくり歩き始めた。
金髪の男、グローディアは少年に多めの金を渡す。
「おじさんはお兄さんの事好きなんだね。僕もおじさんみたいな恋人が欲しかったな。」
「残念だがその期待にはどうあっても応えることができない。」
「来世に期待だね。」
「すまないが私は何度生まれ変わっても彼を選ぶことに決めているんだ。きっと君にも素敵な想い人が出来ると信じているよ。」
「おっせーな、早く来いよ!」
少し遠くから呼ばれグローディアは少年から視線を逸らした。
少年はグローディアが居なくなるとわざとらしく大きなため息を吐いた。 面倒事に巻き込まれなくてよかったと思う反面、面白そうな客だったのでもう少し話せてもよかったとも思った。
「てめーの守備範囲の広さにはびっくりだぜ。」
「守備範囲も何も、もう君だけと決めている。心も体もね。」
「はっ、どうだか」
屋台で買った簡単な食事を取ってから、二人は夜の街を歩いていた。
「妬いているのかい?」
「まさか、食いもん買いに行かせたのにこんなに遅くなってイラついてるだけ。」
カノルはグローディアを見ずに眉間にシワを寄せた。
機嫌の悪い相方を見かねて、グローディアはカノルの手首を強引に掴むと引き寄せて唇を奪った。
カノルは突然の事に驚いて思い切り腕を振ってグローディアの手を振り払った。
「なっ、にすんだよ!」
「私を見なさい、カノル。」
今度は肩を掴むとカノルを壁まで追いやり顎を掴んで強引に深い口付けをした。
くちゅり、と音を立てて唇が離れるとカノルは不機嫌そうに一層きつく睨みつけていた。
「人に見られる」
「他人の事などどうでもいいのだ。君だってそうだろう。」
壁を背に額を押し付け合う程近い距離で見つめ合っていた。
「かえろーぜ。」
カノルはつまらなそうに口を尖らせながらさらりとグローディアの腕をぬけた。
「せっかく遊びに来たのに?」
「アンタの付き合いで来ただけですけど。」
「じゃあもう一件だけ付き合いなさい。」
カノルは距離をとってから長身の彼を見上げた。
「どこに?」
「もちろん、キスの続きを君にもらいに」
グローディアは親指を立て肩の後ろを指した。
指の先には派手な光が激しく煌めく看板の宿屋があった。
カノルは呆れたふうにため息をついて頭を掻いた。
「気に入らないかい。」
「アホらしくなるくらいアンタが自分の欲望に従順で安心したよ。」
グローディアはカノルの前に近づいて手を差し伸べた。
「どうするかね、愛しい人よ。」
カノルはその手を取らずに勢いよく伸ばした手で襟元を掴むとぐっと引き寄せた。
「お高くつきますよ、お客さん?」
カノルは含み笑いを浮かべそう言った。
「言い値で買おう。なんなら、私の身も心もすべて捧げよう。」
カノルは満足そうに笑うと襟元を離したグローディアの手を握った。
「早く行こうぜ。」
手を繋いだまま二人は、夜の街へ溶けるように消えていった。
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