アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
俺のかわいい左目ちゃん
-
体調がだいぶ落ち着いた俺はドストミウルと話をしていた。アーモストの事件でごたごたして聞けなかったことを聞くためだ。
俺の今は亡き左目にはドストミウルの使い魔とやらが入っている。そいつは俺の護身用にとドストミウルが遣わせてくれたものだ。
護身用のはずの使い魔だが先の事件の時は全く反応しなかった。それがどういう訳なのかを今日は尋ねていた。
「不良なの?病気?」
カノルはベッドから上半身を起こしてドストミウルと話していた。
「そういう訳では無い。今回の件は剣の影響が強かったのだろう。元々お守り程度のものだ、上位種と対すれば当然のように抑え込まれてしまう。今回のようにアンデッドが苦手な光属性のものが近くにあれば尚更出てこられなかったという事だ。」
そう言われて思い出してみると、初めの頃イフに手を出された時も簡単に捕まえられてしまった。
ゲイルと対峙した時は直接の攻撃ではなかったせいか、回避に上手く転じられたのだろう。
「もっと強く出来たりしないの?」
「上位種に完全に対抗する事は難しいかもしれぬが、強化することは出来る。なんなら、君の目の神経と繋いで視力を戻す事も可能だ。」
視力を戻す。意外な提案で一瞬考えた。
「ん、それはいいや。今更もどってもまた照準がずれるだけだし。」
ドストミウルは納得したように頷いた。
「こいつって自分で出てきたりおしゃべり出来たりしないの?ずっと一緒にいるし割りと愛着湧いてるんだよね。」
「...」
ドストミウルが何やら急に不穏なオーラを出している気がした。なんで使い魔の話をしだけでこんな不機嫌になるんだコイツは。
「なにそれ、嫉妬?」
カノルはからかうように口の端をあげた。
「否定しよう。それに自我を求めるのは良くない。」
「理由は?」
カノルは笑いながら首を傾げた。
「誠実な使い魔ではないからだ。」
「含みを持たせるじゃん、実はいわく付きなんだ?」
「今はそれくらいの解釈をしておいてくれ。」
ドストミウルはその答えをハッキリさせることはしなかった。誠実ではなく、いわく付き。いいイメージでは無い言葉が並んだが、俺に付けているものだからヤバイものでは無いのだろう。それか、元はヤバくてもドストミウルが完全にコントロール出来ているから安全ともとれる。
「分かった。高望みはしないよ。」
「とはいえ、少し精度は上げておこう。」
ドストミウルはカノルの左目の前に手をかざし、魔法をかけた。
「良かったね左目ちゃん。」
「ちゃん...」
またもドストミウルは不満ありげだ。
「ダメ?それとも名前があるの?」
「ドルディスク、それがその使い魔の名だ。」
「そっか、ドルって言うのか。よしよーし。」
「...」
ここまで来ると面倒臭くなってくる。
どうやらこの使い魔の事ドストミウルはあまり好きではないらしい。それでも良い能力だから俺につけているんだろう。
「だからいちいち妬くなって!調整さんきゅー、じゃ俺ビアリーの所行ってくるから。」
俺はベッドからゆっくりと降りた。
「うむ、まだ無理はするな。」
「分かってるよ。ご心配どーも。」
なんだかんだ俺はこの使い魔に愛着が湧いている。だってドストミウルがいない時も、仕事の時もずっとそばにいる訳だから一緒に過ごしている時間はアンデッドの中でも一番長いんじゃないかな。
常に存在を感じているわけじゃないんだけど、何となくここに居るのはわかってる。いつもひとりじゃないって言ってくれてる気がする。
それから、そう。
コイツはドストミウルが初めて俺にくれた贈り物だったりするのだ。
カノルは少しにこにこしながら部屋を出ていった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
54 / 70