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年は暮れてゆく
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「今年ももう終わりか。」
「うむ、そうだな。」
凛と冷えた空気の中俺はドストミウルと一緒に、屋敷の近くの高台から山を眺めていた。
「アンタは俺と会う前もこうやって年が過ぎるのをしみじみ感じたりしてたわけ?」
「いいや、君が居なかった時は時間も年も数える事はしなかった。もう数え飽きているからな。」
「行事ごとは?割とやってるじゃん?」
「皆はああいったものが好きらしいから勝手にやらせていただけの事だ。君が来てから私も少し参加するようになった。」
「ふーん、永遠に続く人生ってのもある意味辛いもんだよね。」
「辛いという痛みさえ忘れる程に長い。」
ドストミウルは遠くを見つめる彼の横顔を見つめた。
「君にとってはどんな年だったかな。」
カノルはドストミウルの視線に気がついてそちらを見た。
「総評的には楽しかったかな。」
「それは良かった、来年も君にとって良い年になるとと良い。」
「何ともなくずっとこんな生活が続くといいなって思うけど、そうは...いかないんだろうね。」
カノルは視線を落として顔を膝に埋めた。
「何故そう思う?」
「アンタはアンデッドだし、魔王の手下の四天王だ。だからいつかまたアンタが倒される日が来るかもしれない、そしたら...俺はまた独りになる。今度そうなったら俺は耐えられる自信が無い。」
ドストミウルはカノルにぴったりと体を寄せた。
「俺が永遠を生きられない以上アンタと俺の終着点は違う。アンタがやられるか、俺が死ぬかで俺達の関係は終わる。いつ来るかは分からないけど、いつかは来る...俺は、」
カノルはそう言いながら涙を零していた。
「俺は、その時が来るのがっ...怖い 」
ドストミウルはカノルの震える肩を抱きしめた。
「大丈夫だ、カノル。私は何があっても君を愛し続ける。たとえ本物の勇者が来ようとも返り討ちにしてみせよう。」
魔王はいつか勇者に敗れる。それは定まった世界の決まりのような事、それをカノルもドストミウルも十二分に分かっている。
「...うん、うん。俺信じてるからな。」
その言葉が偽りだとしても、カノルは壊れそうな心をその言葉で必死に支えるしかなかった。
「愛しているよ、カノル。」
「ずっと一緒にいてね。俺が死ぬまで、死んでも好きでいてくれていいよ。なあ...俺さ、アンタの事...すげえ好きなんだよ。」
「わかっているよ。君が死んでも愛し続けよう。」
ドストミウルはカノルの唇に自らの口元を押し付けた。
カノルは涙を流しながらドストミウルの肩に腕を回し、口枷の上から何度もキスを重ねた。
新年初めての朝日が、重なる2人のシルエットを赤く映し出す。
「今年も、これからもずっとよろしくね。」
「こちらこそ、よろしく頼もう。」
涙を拭ったカノルは煌々と光る朝日のように笑っていた。
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