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花びらよのう
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何の気なしに横になってきたら眠ってしまった。
短い時間だったのに、夢を見た。
俺は子供みたいに身長が低くなって列車の中にいた。列車の中ではパーティーみたいな事が行われていて、突然スーツの男に声をかけられる。「占いはお好きですか?」と。
嫌ではなかったのでYESと答えると、スーツの紳士は白い紙の上に数種類の色鮮やかな花弁を撒いた。
不規則に舞い落ちる花弁。俺はその花びらが雨のように自分の周りに雨のように振る感覚に陥ってから、すぐに列車の中へと意識が戻る。
「結果が良かったら幸せになれますが、悪かったら...」紳士は暗い顔で言う。
何も言われていないのに、悪かったら俺は死ぬのだろうなと思った。
そんな所で目が覚めた。
良いとも悪いとも取れない夢なのに、後頭部にねっとりとまとわりつくように引っ張られてなかなかはっきりと覚醒出来なかった。
重たい頭のまましばらくぼーっとしていると、物音がして部屋の扉が開いた。日は明るい。足音が近づいて、人の姿をしたドストミウルが顔を覗き込んできた。
「眠っているのかと思った、それとも起こしてしまったかな。」
「死んだように寝てた。沼に浸かってたのかってくらい起きるのがしんどかった。」
ドストミウルはそっとカノルに口付けをした。
「また悪い夢でも?」
カノルは首を横に振った。
「よくわかんない夢。」
「夢は無意識の集合体だ、意味など持たない。」
「アンタは夢って見ないの?」
「どうかな」
ドストミウルはまたひとつカノルに口付けをする。
カノルは少し不服そうな顔をした。
「見ないならそれはそれで羨ましいかも。夢に変な疑問を抱いたりしない訳だし。」
「深く考えない方がいい。」
カノルはやっと体を起こすと、少し微笑みながらこちらを見ているドストミウルを見つめた。
「死ぬのは怖いかな?」
カノルがそう言って、ドストミウルは目を細めた。
「常に当たり前に持っていた意識を手放すのは普通の人なら恐ろしいのではないかな。」
「俺は...」
「死ぬのが怖くなった?」
「アンタとは離れたくないだけ。」
カノルはドストミウルの肩に手を伸ばすと、自然に体を寄せドストミウル深く唇を重ねる。
お互いの舌の形を確かめ合うように舐め合うと、視線を合わせたまま体を離した。
「君を不安にさせる夢なら忘れさせてあげようか。」
「そういう気分じゃないかな。でも...」
カノルが両腕を伸ばすと2人はまた体を密着させた。
カノルは肩に回した腕にぎゅっと力を込めて抱き寄せる。
「すこしこうしてて。」
「ああ、君の気の済むまで付き合おう。」
ドストミウルもカノルの腰に手を回しひとつになれるように抱きしめた。
夢の中の紳士は髑髏の顔で最後にこう言った、「一緒に行こう」と。俺はその手を取った。
花びらが舞う道で手を引かれて歩きながら俺はずっと思っていた。行きたくない、帰りたいって。
夢に意味などない、そんな事は分かっているのだ。
でも、その時確かに俺は思っていた。
死にたくないって。
おかしな話だ。
俺は今日も死神にすがって生を求める。
それでも俺はまだコイツといきていたい。
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