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思い出(その弓の見ているもの)
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勇者第三部隊のミリオ、ノエル、キルティカ、そしてカノル。
部隊を結成してまもない彼女らはとある街での任務についていた。中級の魔獣の討伐だ。
中級とはいえ、普通の冒険者なら手間取る敵だが彼女達はそれをあっさりと討伐した。結成仕立てではあるものの勇者の断片を持つものとして選出された尖鋭だ、凡人とは一つ格が違った。
その日の任務では討伐意外の縛りはなく、リーダーのミリオの発案で彼女達は仕事終わりの祝杯をあげていた。ただ、そこには弓使いの姿はなかった。
「うまく行きましたね!連携が感動的に合ってましたよね~」
魔法使いの女は気分高らかにそう話した。
「そうだな。個々の能力が高いがゆえにうまくまとまらないかと思っていたが、皆が合わせようと気持ちが合っていたと言うことだ。」
短髪の剣士はそう誇らしげに笑った。
「彼も来ればよかったのにね。」
大盾使いの女は困り顔で笑った。
「やっぱり自分だけ男だと色々やりにくいんですかね?」
「性格の問題じゃないかな。彼は成り上がりだから仲良しこよしは苦手なのかもしれない。しかし、そういう所も認め合ってこそパーティーじゃないか。」
「でもさっきの戦いもうまく合わせてくれたね。」
ノエルがそういうとミリオとキルティカも納得するように頷いていた。
「ああ、全体をよく見られているしとっさの機転もきく。我々のずれも彼に上手く補正されたような感じだった。きっと彼は頭の良い努力家なのだろう。」
「頼もしいけどクールでミステリア~ス、ですね。」
そんな事を話しながら彼女らは杯を交わした。
翌日の早朝、ノエルは朝日を見ようと宿を出て街を散策していた。
すると向かいから見覚えのあるフードの男がやって来た。
「カノル!?」
声をかけると男は立ち止まりフードを取った。
青い髪の毛先が風で揺れ、橙色の瞳は朝日でその輝きを増しているようにもみえた。
だが、彼の装いは昨日の戦闘時のままいやそれ以上に傷つき汚れており自分達のように宿で休息をとっていたという感じではなかった。
「へえ、アンタずいぶん早起きなんだな。」
「どこか行ってたの?まさか、昨日からこんな時間までって事はないよね…」
「さあね。今日は王都に帰るだけだし、寝てなくてもたいした支障はないだろ。」
「まさかクエストでもしてきたっていうの?」
「なかなか割に合うモンがあったもんで。」
「あきれた…意外にがめついのね。」
ノエルは腰に手を当てたまま肩を落とした。
「そう思うんならそう思っててくれ。アンタ達とは見てるものが違う。」
少し目を伏せてそう言ったカノルに、ノエルはちょっとした違和感を覚えた。
「事情が…あるのね?」
「気にすんなよ。出発までまだ時間はあるだろ、俺は宿で休む。起きらんなかったらたたき起こしてくれよ。じゃあな。」
カノルはそう言って足早に宿へと向かって行ってしまった。
朝日を受けるその背中をノエルは、ただただ見つめていた。
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