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記憶
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「グローディアはいいな、いつも幸せそうで。嫁さんは料理も得意だし子供たちは優秀で人懐っこいし、ずっと家にいたくなってしまうだろうな。」
「まさか、妻なんて貴方が居ると少しは礼儀正しいですが、私と2人だと我儘なものですよ。」
「それがいいんじゃないか、そういう所が愛らしいんだろう。」
「まあ、そうとも言いますね。旦那様は嫁を貰わないのですか?希望者は無数にいると思いますがね。」
「向こうが良くてもこちらが納得出来なけれは意味が無いだろう。それにこれから魔王とやらを討伐に行くのだ。もしも私が敗れたら嫁になった者が可愛そうだ。」
「そうですが、生きて帰ってきた暁には嫁も誇らしいのではないですか?死を案ずるなら先に世継ぎを作っておくという手段もありますぞ。」
魔法使いの男はにやりと笑った。
「いいのだ、私はこれで。実のところ女性にあまり興味がなくてな。」
「ほほう、男の方がいいと。」
「へんな話だが、どうもそうかもしれないと最近思っているのだ。もちろん君はゴメンだぞ。自分より若い方がいい。」
「きっと巡り会えますよ。貴方のような立派な方には、相応の相手が巡ってくる。」
「...と、いいのだが。どうだろうか。」
「おい!...おい!ドストミウル!」
珍しくベッドで横になり眠っていたドストミウルをみてカノルはベッドの側面を勢いよく蹴り飛ばした。
覚醒したドストミウルはゆっくりと起き上がってカノルの顔をまじまじと見つめた。
「疲れてんのか?もう日はくれたぜ、ちゃんと仕事してくれよ旦那様。」
いたずらそうにこちらを睨むカノルにの頬に思わず指をかける。
「なっ、なんだよ。」
「いいや、何ということでは無い。」
ドストミウルは腕を伸ばしてカノルを抱き寄せた。
「長かったなと思ってな。」
「はっ?何の話だよ!つか離せって、あの...どうした訳。」
カノルが抵抗しようと暴れても、ドストミウルは微動だにせずカノルを抱きしめていた。
「疲れてる?」
「いいや、それ程でもない。ただ、君が愛おしい。」
「そっ、すか。」
そんなドストミウルの様子を見てカノルもドストミウルにもたれ掛かるように体を預けて腕を回した。
「アンタもどうしようもなく寂しくなったり、辛くなったりってするの?」
「いいや、そういう事はない。君が愛おしいだけだ、限りなくなく耐えきれないほどに。」
「ふ~ん。へんなの。」
カノルはドストミウルの口元にそっと唇を押し付けた。
それに対し腕の力を強めたドストミウルと視線が合う。
「だめだぜ、俺はこれから仕事なの。ちったぁ我慢しろよな。」
「...」
カノルは身体を離した。
ふと背後から駆け寄る足音に気がついて振り向く。
「ビア、おはよう。」
カノルはかけてきたビアリーを抱き上げた。
「今日もバーバラおばさんの学校か、いじめられてないか?変なこと言うやつがいたらぶっ飛ばせよ、いいな。」
ビアリーは頷くと笑った。
「俺も仕事だ。お父様はおネムだから放っておいてやろうな、きっと疲れてんだよ。」
カノルはビアリーを抱き上げたままベッドを背に部屋の出口へと向かった。
「カノル。」
扉に手をかけた所で、呼び声に振り向く。
「愛しているよ、カノル。」
「はいはい、わかってるよ。俺も、だなんて臭い言葉は返さないからな。じゃあまた後でなドストミウル。」
その背中を見送るとドストミウルは自らの手をじっと見つめた。
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