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同室者
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これから運動をするのだから、まず腹ごしらえをしようと思い立ちベッドから立ち上がる。まだ見ぬ同室者には申し訳ないが冷蔵庫を漁らせてもらおう。
自室の扉を開き共同スペースにでた瞬間に、頭の中に「やっちまった」という言葉が浮かぶ。
丁度帰ってきたのか同室者らしき人物と鉢合わせてしまったのだ。同室者らしき人物は俺を凝視して、お互い身動きがとれない。
しばし見つめ合い、自分が隊服のままであることに気がついた。
「な、なんで軍の方が……?」
彼の目には、不安の色が浮かんでいる。彼は、茶髪の色素の薄い目が警戒を含んでこちらを見ていた。
「……急で驚いてるとは思うんだけど、まず、怪しいものじゃないから」
自分で言っていて怪しさ満載すぎるがしょうがない。素直に全て話した方が、同室者に隠し事をしなくて済むし、この先楽だろう 。
特に国王や理事長からも口止めされてないし、と屁理屈を述べていく。
「今時間ある?ちょっと色々君に説明したいことがあるんだ」
「はい」
真面目そうな彼は、動揺しながらも俺に従ってソファに座った。元々彼の部屋だというのに段々と申し訳ない気持ちになってくる。
「あ、敬語じゃなくていい。多分同い年」
「は、はあ…」
実に気まずいが、二人で机を挟むようにしてソファに座っているため相手の緊張が切に伝わってくる。なんとか場を和ませるためにタメ口で良いなんて言ったけれど、相手からしたら「アンタ誰」状態なわけだし何言ってんだ、と自分にツッコミを入れる。
「まず、自己紹介からね。俺はシキ・シノノメ。第七師団三番隊隊長をしている。今回は急に申し訳ない。俺も昨日言われたばかりで結構びっくりしてるんだけどね…」
ハハハ…と自分の乾いた声が部屋に響く。
「第七師団三番隊って神出鬼没で名だたる麻薬密売組織や、国際犯罪組織を次々と根絶やしにしている噂の…?」
恐る恐るといった風に話す彼に、頷いてみせた。民間人にはそういう風に噂になっているのか、と思うと自分はとんでもないところにいるのだと再確認させられる。
「しかも、その隊長の噂は筋肉累々とか、冷血漢とか、血も涙もない鬼とか、巨大な熊を一撃とかありますけど」
敬語なしね、とツッコミつつ、彼が言い出した俺のイメージについ笑ってしまう。
「まあ、噂だからね。気になったけど、そんなにウチって噂になってるんだ?第一師団の方が花形だよ?」
「いやいや!その正体不明!そのくせ活躍する頻度が高い隊の方がみんな気になるに決まってるよ!」
突然身を乗り出して熱く語り始めた彼に思わず身を引いてしまった。自分たちが思っているよりも、民間に周知されているのに驚きが隠せない。俺達ダガーはきっと「都市伝説」のような存在なのだろう。
「まあ、ウチの噂はどうでもいいんだ。まず君の名前を聞いても?」
「あぁ、ごめん。俺はシノ・エレクアント。実は第七師団の三番隊には以前から興味を持っていてね、ファンなんだ!何度も隊のシステムにハッキングしてるんだけど、全然ダメだっ……あ、」
聞き逃せない言葉を耳にし、思わず「ほう…?」と低い声がでる。
「…ウチの隊にハッキング?いい趣味してるね。」
「い、いや、2回だけ!!さ、3回だったかな……?」
真面目そうな癖に、結構やんちゃなヤツらしい。俺は睨みつけるのをやめて、笑ってみせた。
「…ふ、まあいいよ。ウチには優秀なシステム担当がいるからね。」
ちなみに、そのシステム担当とは、副隊長のセイウンのことである。
そういえばこの前随分手のかかるハッカーがいるとぼやいていた気がするが、コイツのことだろうか。
「まあ、俺がここにいる間は治外法権だと思ってもらっていいけど、もう二度とするなよ」
首を縦に思い切り振ったシノに、また笑ってしまった。俺は運が良いのかもしれない。きっと、コイツは良い奴だ。
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