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追想2
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遡ること、三年前。
その日は、冬休み前の終業式の日。俺はいつも通り学ランを着て、いつも通りの通学路を通い中学校へと向かう途中だった。
俺の家族はごく一般的な家族だったと思う。
父と母と、弟と妹。両親は共に働きにでていたが、別に苦労はなかったと思うし、弟も妹も歳はあまり離れていなくて、仲が悪いわけでも仲が良いというわけでもなかったと思う。
良くも悪くも普通の家族だ。
中学生活だって、普通そのもの。部活はやっていなかったから、学校の授業が終わって掃除して帰りの会をして家に帰る。晩御飯を食べてお風呂に入って宿題をして寝る。朝が来て、支度をして家を出、学校に行くの繰り返し。繰り返される日々。
ただ、毎日がただ繰り返されて。……俺は、なんのために、誰のために、生きているのだろう。
目標は?夢は?やりたいことは?
別に人生を悲観していたわけじゃない。ある程度やりたいこともあったし、目標もあったはずだ。…夢、はなんだったろうか。
目標というか就きたい職として教師を目指していたし、勉強も嫌いではないけど、好きではなかった。俺の胸の中を常に占めるのは、やらない理由とか、言い訳とか、ある程度の妥協とか、
そんな自分が嫌いだった。何故この人生を思いっきり楽しめないのか、わからず悔しかった。
そして、登校途中。いつも通りの通学路。挨拶すらしないけどいつも目が合う女子高生とその日だけなぜか会釈をした。
前からどことなく危ない動きのトラックが走ってくる。嫌な予感がしてしょうがなかった。トラックが歩道に突っ込んでくるように見えた。
交通事故が起きた。
軌道上、女子高生が跳ねられる。俺の日常が壊れてしまう。自然と身体が動いていた。
酒気帯び運転していた大型トラックが、俺の身体を跳ねたのだった。
あーあ。なーんも、やってないのになあ…。せめて、今週のジャンプ買いたかったなあ、とか。今他人に携帯の閲覧履歴見られるのは、ちょっとなあ、とか。今日の夕飯は、うどんだって言ってたなあ。母さん。ちょっと食べたかった、とか。女子高生、大丈夫かなあ、とか。
……生きたかった。
とか。
ふと気づくと、死んだはずの俺は戦場にいた。
三年前のシビュラ国は隣国と国際問題を抱えており、その時シビュラ国は優勢だった。
ただ、そんな国際問題うんぬんなんて当時の俺には関係なくて、とにかく生きなければならない、そう思った。
しかし、現状は変わらず、ここは戦場。目前に迫る敵に俺は呆然とするしかなかった。
そこに現れたのは、金髪のヒーローだった。俺は何故かその金髪に気に入られ軍に入った。ただ、何もしないわけにもいかないし、ヒーローに認められたかった。
なにより何もしない、というのは自分が何故ここにいるのか、何故生きたいのか、わからず狂ってしまいそうだった。溢れんばかりの生への執着のせいで、自分に意味を持たせようと息苦しくて仕方がない。
だから俺は、第一師団団長ーー俺のお世話係はその人だったーに頼んで、身体を鍛えた。
しかし、もともと筋肉のつきづらい俺は、どうしたものか、と。誰かの真似をしても、俺は強くなれない、二番煎じではダメだ、と。そこで、俺は鍛え方を変え、相手の力を利用した体術や、力では勝てないので、相手の攻撃をなるべく避け、かつ無駄な動きを省くことを重点として鍛えた。
ちなみに、元々前の世界で俺は帰宅部で、唯一足が速いことが取り柄だったが、この世界に来てから魔法のように思うように身体は動き、特訓は順調に進んだ。
後悔なんか、やめだ。俺は思いっきり、生きてやる!この世界で来て、俺の中で大きな改革がなされたのだった。
その後トーカは俺をこの世界のありとあらゆる場所へと連れ回した。戦争中の国とかもあったのにも関わらずだ。そして、シビュラに戻ってきてトーカに言われたことは今でも覚えている。
ーーこの世界に神はいるが、ヤツは俺達に何も教えちゃくれないんだ。だから、自分がここにいる意味を自分で見つけなきゃいけねえ。……だかな、この世界はお前も俺も全てを知り尽くせないくらい果てしなく広い。
「だから、生き急ぐ必要はない、か……。」
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