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節約って大事よね3
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「新入生歓迎会?」
朝のHRの後、シノから告げられたその行事。毎年5月の3週目にやる行事なのだと言う。
「そう。チームどうする?」
「チーム?」
「シキ、さっきのタクちゃんの話聞いてなかったん?」
「タクちゃん?ああ、ターク先生のことか。」
「今年の新歓は、鬼ごっこなんだって、チーム組んで一年は逃げるんだよ。」
「ぼーっとしてたわ。チームって何人のを作んの」
「4人」
「よんんん?シノは俺とでいいの?」
「お前以外誰がいるんだよ、ほらあと二人見つけなきゃ」
見つけなきゃってお前……俺ほとんどクラスメイトと喋ったことないのに……。そう思ってると俺と同じくらいの背丈の同級生が近づいてくる。
「………シノ君、まだチーム、二人だけ?」
話しかけてきたのは、クリーム色のふわふわの髪の毛の男子。
「僕達もまだ二人なんだ。一緒にチーム組まない?」
「俺は、良いけど。シキは?」
「あぁ。良いよ。」
「良かったー!僕、シキ君と話してみたかったんだよね!」
「えっ、俺?」
「クロエがね、君を見て反応したから、クロエが誰かに反応するなんて珍しい…って、ちょっとクロエ!こっち来てよ!」
ん?クロエ?聞いたことある名前だな。
すると、切れ長の目に黒髪で高身長の男が…
…って、なんでいんだよ。
「………」
「……………」
ソイツと見つめ合い、俺から話し掛ける。
「クロエ君って言うの?よろしく。俺、シキ。シキって呼んで。」
「あ、あぁ。」
とにかく、コイツと二人にならなくてはならない。
「ちょっと、俺、トイレ行きたいわ。クロエも行きたいだろ?行きたいよな?」
行きたいって言えよ、オラ。行くよな?という顔をして顎をしゃくってやった。
「あ?おっ、おぉ。」
「ちょーっと俺ら仲良く連れションしてくるから、二人待っててなー。」
ぽかんとしている、シノとふわふわ系少年を残してクロエと教室から出て行く。
クロエは俺の二歩程後ろを歩いてついてきて、怒られるのがわかっているのにやらかした犬みたいだ。
なんでこいつちょっとビビってんの。うける。いや、うけない。
どうやら、コイツは俺が怒ってるとでも思っているらしい。
しばらく歩き、人目のつかない廊下までくる。立ち止まり、後ろを振り返ると、ビクッと肩が揺れた。
「…なんでビビってんの」
「………だっ…て、俺がここにいること、言わなかったから隊長怒ってると、思ったっス。」
そう、コイツは俺の昔の部下である。しばらく極秘任務に就くと、一年半くらい前から会ってなかったが。
「怒ってねえよ。むしろ、良かったよ。ちょっと今大変なことになってんだ。まあ、こき使うかもしれないけど、そこは勘弁しろよ?」
「あ、ハイ。それはいいっすけど…。」
「お前が極秘任務って言ってたの、って何?この学園で誰かの護衛とか?」
「っス。さっき一緒に居た、ノアがそうっス。王族の分家なんすけど、少し前から脅迫文とかが家に送られてきてるらしいっす。」
…………今まさに危ない状態だっつう話がでてんのに…。
「ノアってさっきのふわふわ系少年か。」
「た、ぶんそうっス。」
「ノア君が分家ってけっこー有名なの?」
「いや、知ってるのは俺と本人だけっす。本人が王族として見られるのが嫌らしいんで。」
「ふうん。わかった。じゃあこれからノア君の身の回りで何かあったら必ず報告しろ。いいな?」
昨晩ニイロさんが言っていた件ともしかしたら絡んでいるかもな。念を押してクロエにそう言った。
「了解ッス」
「あ、あとお前その俺に対する似非敬語やめろよ~?俺はただの転入生なんだからな」
「………他が居る時だけ」
「まあいいか、それで。」
「っす!」
……なんでちょっと嬉しそうなんだよ。同い年に敬語って普通嫌だろ。昔からコイツそうなんだよなあ。懐いてもらえる分には嬉しいんだけどな。
あまり放置してきた二人に怪しまれるのは面倒くさいのでさっさと教室に戻ることにする。
「あ、戻ってきた~」
「ただいま。」
教室に戻ると、シキとノア君が二人で話していた。
「シキ君!僕はノアね!よろしく!」
と、握手を求められたので手を差し出す。と、ぶんぶんと手を振るノア君。結構力強いな。
「ノア君、よろしく。」
「もー!君付けなんてやめてよ!ノアって呼んで!」
ちょっとかわいいな、コイツ。
「じゃあ、ノア。俺もシキって呼んでよ。」
と、言うとぱあぁぁぁっと顔が明るくなるノア。かわいいなあ。
「うん!あ、そうだ!さっきね、シノと鬼ごっこの話してたんだ!」
「鬼ごっこ?あ、新歓か。」
「僕、新歓楽しみなんだよねえ」
「…一般的な鬼ごっこだと思っていいの?」
「シキ、ルール知らないだろ」
「知らない。」
俺が即答すると、少し呆れたような顔をしたシノが説明してくれた。
鬼ごっこのルールはこうだ。
まず二、三年が鬼、一年が逃走者と分けられ、一年は四人一組になって一般棟二つとグランドで逃げ回る。
鬼ごっこ終了時チームの誰かしらが生き残っていれば、逃走側の勝ちというものである。
また、逃走側の救済措置として、捕まった者がいるグランドにブザーがあり、それを鳴らすと捕まった者は一斉解放という捕まえた側からすれば苦労が水の泡…といったものである。
生き残った側の特典として、食堂一年無料券が授与される。
これは鬼ごっこガチ勢を目指さなければならない。
「一応、注意書きに携帯電話の持ち込み禁止ってなってるけど、俺小型インカム作ったからこれなら鬼ごっこ中使えるよ」
「シノ、すげえな、お前。でも使っていいの?インカム。」
「この学園を生き抜くためには、ルールの穴を突くことだよ、シキ。」
まあインカムがあるとないとじゃ大違いだからな。なんか、こうなってくると、本気でやりたいな。
「じゃあシノ、頼むよ。」
「あーい」
「じゃあみんな、聞くけど、足の速さに自信はあるかな?」
「僕はない。期待しないでね」
と、ノア。
「俺はまあまあかな、普通だよ。」
「………俺も」
おい、クロエちょっとちっちゃく「っす」って聞こえたぞ。やめれ。
「体力はどうかな?」
「体力は任せて!マラソンは得意なんだ。」
ノアはマラソンが得意、と脳内メモに書き込む。正直意外だ。
「俺は自信ないかも、ずっとは走ってられないかな」
「………普通」
クロエの身体能力は把握しているから、いいとしてどうするかな。
「俺は、足の速さと体力は普通だよ。」
と、言うとクロエが凝視してきた。
やめろ。見るな、そんなウソつきを見るような目で見るなバカ。
「ただ俺はこの新歓、食堂無料券を賭けて、本気で挑みたいと思う。この鬼ごっこ、俺の作戦に任せてもらえないだろうか」
少し畏まったように言ってやるとシノがそれに便乗する。
「よし、いいだろう。」
「なんか燃えてきた!」
「……」
この即席メンバーでどこまでやれるかはわからないが、これはやらねばならない。
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