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親衛隊とは4
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「……ノア、悪かったな」
「…………ん?なにが?」
寮への道のりで、俺がそう言い出すとノアは小首を傾げて聞き返す。
「いや、ほら。親衛隊があそこまで疎まれてるなんて思わなくて、安易に連れてっちゃったし、横から口出ししちゃったし」
「ううん、あそこまで顕著に嫌ってるのは副会長様くらいだし、僕も分かっていてついていったんだよ?
それに、シキは庇ってくれたんでしょう?」
「いや、色々この学園について知らないんだな、って実感したっつーか、知らないのに口出しちゃって、もう…本当、俺バカ……」
「ふふ、そんなこと考えてたの?僕は気にしてないし、ここに来てからあんまり時間経っていないのに、あそこまで親衛隊について理解してるなら充分だよ。」
「……うん、ありがとう…」
「どういたしまして。とりあえず今回のことで制裁なんてさせないから安心してね。」
「はは、ノアは頼もしいな」
「あったりまえでしょー?」
シキはノアの髪の毛をくしゃくしゃと撫でる。
「絶対、させないんだから」
「?…なんか言ったか?」
「んー?シキは僕が守る!って言ったの!」
「それは、嬉しいな」
自室にノアと共に戻ると、やはりシノとクロエが待っていた。この二人が何を話すのか至極気になるが、相手はどうやらそんな空気ではないようだ。
「シキ!!大丈夫だった!?」
「ん?大丈夫だったよ。」
クロエも目で心配だったことを伝えてくる。
「…………ふふっ」
「な、何笑ってるんだよ」
「いやあ?べつに?」
なんだか、いつのまにかこんな風に思ってくれる奴が増えてることに、つい、笑ってしまったのだ。
晩飯は食堂で食べると言うので、ノアとクロエが帰り、しばらくしてシノが晩飯を作り始める。なんともなしに台所までついていき、シノが料理しているところを眺める。
「シキ、生徒会に何をお願いしたの?」
「あー、外出許可」
「?外出許可?なんで?」
「あー、もしかしたら任務とかで、外に出なきゃいけないかもしれないからな。」
「ふーん?」
「あー、いや、外出許可なんて理事長に頼めば一発だろうけど、毎回理事長のところなんか行ってられないからな」
「なるほどね、なんか言われたりしなかった?大丈夫だったの?」
「だーから、おれは大丈夫だったってばさ。
……俺よか、ノアが」
「あー、ノア何か言われてた?」
「…あぁ、アイツは多分、普段のあの周りからお姫様って呼ばれるような質じゃない。きっと、おれが心配するようなヤワな奴じゃないだろう。だけど、俺の目の前で、友達を傷つけられる、つーのは、どうにも……」
シノはきつく握るシキの手を見遣り、ノアの本来の質について知っていたのか、と思う。
「アイツのあれは、大して気にしてねえし、いいんだ。猫被ってたって。俺も言ってないことあるしな。」
そう言われ、自分は同室で本当に良かった、とひとりで安心する。だって、シキの秘密を俺は知ってるんだから。
「親衛隊っていうのは、ああいうものなのか?蔑ろにされるものなのか。」
「隊によると思う。副会長のところは、前の隊長が、ほとんど私物化していたし、制裁も凄かったから。」
シキは黙り込み、何か考え込み始める。
「……ほら、ご飯できたよ。考えるのは後にしよう。」
「……うん」
この学園に俺が入学した本当の意味があるんじゃないか?と、今回の事で思うのだ、
親衛隊について、とか。いや、自分の勝手な思い込みに過ぎないが。それでも、この学園は俺たち自警団の卵のようなものだ。折角ここにいるんだから、なにか学園の為に動いてもいいかもしれない。まあ、友達の為だ。
なにより、この前ニイロさんが言っていた事も、何も解決していない。今晩あたりニイロさんに連絡してみるか…。
自室に入り、カフスをいじる。
「ニイロさん、今、忙しいですか?」
『シキ?僕も丁度連絡しようと思っていたんだよ』
「じゃあ、何かわかりましたか?」
『うん。その学園の王族にしばらく脅迫している輩がいる。王族と言っても、分家だけどね。』
「そいつが、件のシステムに侵入してくるモノですか?」
『その可能性が高い、ね。』
「犯人はわかりますか?」
『犯人は、普段麻薬売ったりコソコソ稼いでる奴らだよ。組織の名前は、"鼠(ラット)"。だけど、おかしいんだよ。』
「なにがですか?」
『奴らは普段、脅迫したりそういった事はしない。コソコソ動くんだよ。もしかしたら、命令している奴がいるかもしれない。』
「……黒幕がいるって事ですか?ただ金が大量に必要になったとかではなく?」
『ごめんね、シキ。これに関しては僕もまだわからないから、断定ではないけど…」
「なんとなく匂うんですね。わかりました。」
彼が、断定的ではない事を言うのは、珍しい。
『ありがとう。それで、その脅迫されている王族の生徒なんだけど…』
「はい。」
『………一年Sクラス、ノアって子。彼、かなり危ないかもしれないね。』
ニイロさんの声が遠い気がする。耳鳴りが、する。
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