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◇
「おーい、ひろくん、いつまで寝てるの?」
「んん……」
誰かに呼ばれる声で目を覚ます。
「あはは、泣きすぎ。顔ぐちゃぐちゃじゃん」
頬に残る涙を、袖で乱暴に拭かれた。
「んぐっ、ん"ー」
「よしよし」
頭を撫でられる心地よさに身を任せていたが、暫くするうちに我に帰った。
「……奈央」
「なぁに?」
しゃがんで俺の顔を覗き込む奈央の、幼さを残す可愛らしい顔はあの日から変わっていない。
「んーん。会えて嬉しい」
起き上がってふわっと抱きつくと、優しく微笑んで抱き締め返してくれた。
「ね?言ったでしょ。またいつか会えるからって」
「まるで俺が信じてなかったみたいじゃん。俺はずっと奈央のこと待ってたよ」
「知ってる」
俺から少し離れると、ちょっとだけ寂しげな表情をした。
「ひろくんはあの日からまた背高くなったね」
「奈央は変わらないな」
「まさか、僕は変わってきてるよ」
「?」
言っている意味がわからず、首を傾げる。
「あはは、変な顔。……ひろくんはもう僕のことは忘れて……もっと幸せになってね」
「なにいってんの。俺はずっと奈央のこと忘れてないし、忘れない」
「駄目だよ。僕は居ちゃいけない人間だから。………じゃあ…またね」
「まってっ!まだ会ったばっかりだろ…?もう少し話がしたい」
奈央の腕を掴んだ手をそっとはがされる。
「また、会えるから」
「もう…沢山待つのは嫌だよ……っ」
涙で視界が歪んだ俺の頬に手をそえ、おでこを合わせるとはにかんだ。
「大丈夫。また近いうちに会えるから」
そういって静かに消えていった。
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