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「あーん」
「じ、自分で食べれる…っ」
最近ひろとさんの帰りが遅く、甘えたいなと思っていたところだった、のだが。
(この意地悪な笑顔は分かっててやってる…)
「あーきー」
「うぅ…」
渋々口を開けると、伍さん特製の親子丼の旨みが口一杯に広がった。
「!?伍さんっ!これめちゃくちゃ美味しいです!」
「でしょぉ~」
「…あつむって意外と料理出来るんだよなぁ」
「意外ってなんだよ意外って」
仲が良いからこその会話を聞き、自分もほわほわと和んだ。
「…あれ、彼氏の裸覗くなんて悪い子」
「ち、ちがっ//」
髪の毛を乾かしてあげようと、浴室のドアが閉まる音で洗面所を覗いただけなのだ。
(腹筋割れてる……あ)
ドッと後悔が押し寄せた。
胸元と腹部には、縦に痛々しい傷跡が付いていた。
「ごめん…なさい…」
最初は何を言っているのか分かっていないようだったが、次第に俺の視線がどこにあるか察すると、優しい笑みに変わった。
「秋のせいじゃないでしょ。元はと言えば俺が帰りに牛乳買ってこなかったのが悪いんだから。」
胸がどうしようもなく苦しい。
ひろとさんと一緒にいるときよりもずっと。
胸を抑えても、苦しさは変わらず、涙が溢れてくる。
「……大丈夫…秋は何も悪くないよ。俺はちゃんと生きてるから。」
俺の元へ寄り、そっと抱き締められ、キスをされる。
深い深い口付けに、身も心も落ちていく。
ひろとさんが居なくなったら、俺はどうなるんだろうか。
そんなことを一瞬だけでも考えてしまった。
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