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大学に戻り、いつも通りの日々が戻りつつあった。
単位を取り戻すために精一杯で、朝から晩まで授業をとった。
「単位足りるかな…」
「手術だろ?病気かなんだか知らないけどなんとかなるって。俺も手伝ってやるからさ」
珍しく旭日と一緒に帰っている時に焦っていると、旭日が勇気づけてくれた。
「ふふ、ありがと」
駅で別れ、暗い住宅街を歩く。
(今日の晩御飯なにかなぁ~)
るんるんで晩御飯のことを考えていると、後ろから真っ黒な影が覆った。
(……んん………さむい…)
寒さに目を覚ますが、開けても真っ暗なままだ。
その時、誰かが近付いてくる気配がした。
思わず床らしきところを蹴り、後退る。
「こ、怖がらないで…?嫌がることはしないから…」
聞こえたのは弱気な声だった。
透き通っていて少し高めだが、間違いなく男の声だ。
手足の自由が利かず、口に何か噛まされている。
「…寒い…?布団被せるよ…」
その声の後、薄めの掛け布団が横たわっている俺の体にかかった。
「怖いよね…ごめんね…」
当たり前だ。さっきから恐怖からくる涙で目隠しが湿っている。
「…暴れなければ明日ご飯食べさせてあげるね」
そう言ったきり声が聞こえなくなった。
次の日、まだ状況が理解できないまま一睡も出来ずに朝を迎え、暴れず大人しくしていた俺は口に噛まされていたものを取ってもらった。
「お腹すいてない…?ご飯準備したけど…」
誘拐犯の食べ物を易々と食べていいはずもなく、口を固く閉ざした。
「た、食べないと死んじゃうよ…」
目隠しも外してもらうと、視界が晴れた。
目の前でおろおろとしながらご飯を持っている誘拐犯は、頼りなさげだ。
顔立ちこそ整っているものの、目の色と髪色がとても薄く、染めたような感じではなく元からそうであったように自然としていて、浮世離れしていた。
とても誘拐するような人には見えない。
ご飯も食べる気が起きず、ずっと口を閉ざしたままだった。
5日が経っても口を開かず拒み続けたため、流石に体に力が入ってこなくなってきた。
ぐったりと部屋の隅で体を横にしていると、誘拐犯が何を思ったのか、口を開けて食べ物を少しずつ流し込んだ。
「…ごめんね。でも秋くんが死んじゃうから…」
表情は本当に申し訳なさそうな顔をしていた。
流れてくる食べ物を拒まず、限界だからか口を動かして積極的にものを口にした。
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