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episode2
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澪は北海道の新千歳空港で降り、花屋に寄って街から少し逸れた高台へと向かった。
深夜だからか辺りは真っ暗だけど、高台から見える煌びやかに輝く札幌市の街があった。
そんな街を眺めながら、重い足取りで高台の頂上へと目指す。そこにはぽつんと1つの墓石があった。澪はしゃがんでひとりごとを喋り始めた。
「先生、遅くなってごめんね。これ買ってきたよ。」
そう言い少し寂れた墓石に胸を痛ませながらも花を添えた。
「……ここに来る前にね、懐かしい夢を見たんだ。本当はね、先生に文句言ってやりたいこといっぱいあったんだけどな……。」
何かが胸の奥から込み上げてきて、目頭が熱くなる。
胸をぎゅっと掴んでしまう程に苦しい。
「なんでかなぁ、、なんでっ…、あの時、ぼくをっ、……ぼくなんかをっっ……みんなっ、は……。」
忘れたくない。先生もみんなも、全部忘れたくない大切な記憶。
忘れたくないのに、、
「せんせっ……ぼくっ、、わすれちゃうんです…。」
みんな知らない。谷くんも同期の人達も。
知られたくない。悟られたくない。
僕が_______だという事を。
地面にシミが出来ていた。それは僕の目から零れた涙だった。
脳裏に何かの記憶がよぎり、僕の胸を痛めつける。
ここに来るといつも過呼吸気味になる、それは分かっている。
わざと自分を痛めつけている。
忘れないように。
忘れちゃだめだから。
先生やみんなの為にも。
____は僕だけだから。
先生の__はもう僕1人だけだから。
次の日、研究施設には戻れなかった。
自分は今酷い顔をしているだろうから。
でも明日になったらきれいにさっぱり忘れてる。
僕はそういう人間だから。
谷くんや色んな人達からメールがきてたけど、それすら読む気力が僕には残っていなかった。
僕が今どんな気持ちになっているか知らないで周り続けるこの世界がただひたすらに憎くく思えた。
その日は1日中泣きまくった。朝起きると目がこれでもかという位に腫れていた。
でも、なんでこんなに腫れているのか、頭が痛いのか、なにも分からなかった。
分からないことが恐ろしかった。ここに1人残されたような気持ちになった。
そんな催眠術にかかった僕を目覚めさせるように時計のアラームが部屋中に鳴り響く。
「あぁ、もうこんな時間だ。仕事に行かなくちゃ。」
研究施設へ行くと、谷くんが慌ててこっちへ向かってきた。
「先生!2日間も連絡ないってどういう事ですか?何かあったんですか?」
「ごめんね、ちょっとぼーっとしてて連絡し忘れてた。」
「はぁ、何ですかそれ。何かあったらちゃんと言ってくださいね。」
「うん、ごめんね。」
「…なんで謝ってばっかりなんですか、先生らしくないじゃないですか。」
「…僕らしくないって?逆に僕らしいってなに??」
「先生…?」
「いや、ごめん、本当になんでもない。先研究室行ってる。」
谷くんに八つ当たりしてしまった。行き場のない変な気持ちが僕を苛立たせる。
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