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年上ってずるい 2
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────キヨ視点────
男の手に赤く、叩かれたような痕がついている。
驚いて横をむくと、マスクをした男の人が立っていた。
…助けて、くれた。
「すみません、この人俺の連れで。ほら、行こ」
「あ、ぅん…」
俺のことを助けてくれた人はそのまま俺を引っ張って電車を降りた。
ホームに降り、そのまま出発した電車を見送ると、力が抜けたのか俺はその場に倒れ込んでしまった。
「あの、さ。大丈夫だった?」
それを心配そうにさっきの人が覗き込んでくる。
「…大丈夫、です…多分」
「立てる?」
「ありがとうございます…」
差し出された手をとり、俺は立ち上がる。
あ、この人俺より少し小さい…
「ほんとに大丈夫?怖かったでしょ、キヨくん」
「まぁ…ん?キヨくん?」
「あれ、キヨくんだよね?」
俺だよー、とふわふわした声には聞き覚えがある。
「…そらる、さん?」
「そう」
そらるさんは俺の友達の友だち?で、歌い手の方だ。
そんなに喋ったことはないけど、Twitterも相互フォローしてて、友達から話をよく聞く人。
たしか俺より2、3歳年上だった気がする。
俺もちょっと焦ったよ、俺の肩を優しく叩く。
その姿が俺の兄貴と少し重なった。
安心したからなのか、俺の目から涙が落ちる。
「…すいません、安心しちゃって」
「いいよいいよ。ちょっと話せるとこ行こうか。」
────そらる視点────
ぐずぐずと鼻をすするキヨくんをベンチに座らせて、俺もその横に座る。
大丈夫?と声をかけると、赤い目をしたままこくりと頷いた。
まだ小さく手が震えているところをみると、ほんとに怖かったんだろう。
ちょっとした沈黙の後にキヨくんが口を開いた。
「…ほんとにすいません」
「気にしないでいいんだって。むしろ今は俺に付き合わせちゃってる感じだし」
不安そうな背中をさすってあげると、少し笑顔が見えた。
「…初めてなの?」
「え?」
僅かな笑顔が消えて、またキヨくんの顔が強張る。
「いや、そういう事じゃなくて…失礼かもしんないけど、俺、男の人がされてんの見たことなくてさ。」
「…いや、俺も初めてです、あんなの。」
スキニーなんて着るんじゃなかった、と口が小さく動く。
うん、そうだね、俺もスキニーが悪いと思う。
男にしては珍しい細くて長い足に、その形が表れる黒いスキニーはよく映えるけども。
そんなの見せられたら触りたくなるのが男のサガってもんでしょ。
スニーカーとの間から白い肌がちらりと見え、無意識に喉がなる。
…んん、抑えろ。頑張れ俺…!!
「…そらるさんは初めてじゃないっすよね、…その、痴漢…から助けるの。」
「ん?」
「俺の事助けてくれた時も揉め事にせずに…なんて言うか、スルッと助けてくれたし」
するっと、ねぇ。
まぁ今回はキヨくんの涙を見たら、考えるより先に体が動いちゃってただけなんだけど。
「妹がいてね、そのせいもあるのかなぁ」
「へぇ、妹いるんっすね」
「意外だった?」
「んんーなんかそんな感じはしてましたよ。だって、俺を助けた時なんか大人!って感じで、その…かっこよかったし」
まだ目をを赤くしたまま、キヨくんが恥ずかしそうに言う。
…なに、キヨくんすっごい可愛いんだけど。
「…キヨくんさ、普段からこんな感じなの」
「え?普段?」
「んーん、やっぱりなんでもない」
動画の中で暴言を吐き散らしながら絶叫してた人とは思えない。
オンオフが激しいだけなのか、もしくはこの状況だからか。
後者だったら嬉しいな、なんて思ってしまう。
…まふまふでさえこんなに可愛いキヨくんは見たことないだろう。
なんかちょっと優越感。
「…あの、そらるさん?」
「はいはいなぁに」
「俺ん家ここから1駅分ぐらい離れたとこなんですけど、…ちょっと怖いから送って貰えたらな…なんて」
「ふふ、いいよ。」
ここで1人で帰らせるほど俺も冷たいやつじゃない。
.......それに、もうちょっとキヨくんと話していたいな、なんてね。
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