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醒めない悪夢(hrky)
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※フジキヨ付き合ってた設定(過去)
※過剰愛表現あります
※「曼珠沙華」はもうちょいお待ちくださいませ
───キヨ視点────
暗い、寒い、重い、息苦しい。
ここはどこだっけ。
目を開いてるのかも分からないぐらいの闇が目の前に広がっている。
いくら歩いても変わらない闇。
俺はどうすればいいんだろ…
ーキヨ。
「へ?」
後ろから懐かしい声がした気がした。
ーキヨ。
まただ。
俺の他にも誰かいるのか?
意を決して俺は後ろを振り返る。
「…こー、すけ。」
難しい顔で腕組みをする仲間の姿があった。
よかった…俺1人じゃどうしようもできないもんな、仲間がいて良かった。
「こーすけ!お前ここどこか分かる?閉じ込められたのかな…」
「は?何言ってんだよ。俺に頼んな自分で考えろ」
「…え?」
こーすけの目が冷たく細められる。
「おい…冗談やめ」
「冗談なわけないだろ。お前はいつも俺にばっか文句言ってさ。自分で何か考えたことあるわけ」
…なに、いってんだよ
心に冷たい石が重くのしかかってきた。
「…ねぇ、レトさん」
「レトさん…?」
こーすけの隣にはいつの間にかレトさんが立っていて、座り込む俺を見下ろしていた。
こーすけと同じ、ゴミを見るかのような冷たい目で俺のことをちらりと見る。
「ほんまにどうしようもないやつだと思うわ、おれも。」
「そんな…」
「なに、話しかけんといてくれる?皆そう言ってるで」
皆、というのと同時にレトさんが周りをぐるっと指す。
いつの間にかそこにはうっしーがいてガッチさんがいて、歌い手の友達やゲーム仲間、高校の友達まで皆いて、俺を責めるように円をつくっていた。
…なんだよ、お前らどうしたんだよ。
なんか変だぞ…お前ら。
「どうしちまったんだよ…」
1人がくすくすと笑いながら俺の右手を踏みつける。
もうひとりが左手、もうひとりが脇腹。
心底楽しそうな顔をしながら、俺を殴っていた。
「…は、なに黙ってんの落ち込んでんのー?」
「無様だなぁ。おーいキヨ今の気分はどうですかーってな」
「お前なんかいなくなればいいのに」
悪口が棘のように俺の体に刺さっていく。
なぁ…どうしちまったんだよ。
いたい、いたい、痛い…
なんで殴るんだよ、なんでそんなこと言うんだよ…。
俺何か悪いことしたのか、こんなに大勢に対して。
もう分かんねぇよ…。
ボロボロになりながら、俺は必死にあいつの姿を探した。
大好きで、大好きでたまらない人。
あいつならきっと、助けてくれる…
フジ、助けて…っ。
「…キヨ?」
「え、…」
いつの間にか目の前にフジがいて、しゃがんで地面に這いつくばる俺を見つめていた。
俺を殴っていた奴らも手をとめ、成り行きを見つめている。
「…フジ、」
助けて、…助けてっ!!!
フジは必死に伸ばした俺の手を掴んで、
「…じゃあな、ばいばい」
振り払った。
「…なん、で」
「あはは、フジにも裏切られてんの」
「残念だったねキヨちゃーん」
何も言わずに、フジは少し離れたところにいるこーすけ達の近くへ歩いていく。
…なんで、なんで…!
「フジ…、俺何かやった!?なぁ、なんか言ってくれよ…っ」
「そろそろ黙れよ!」
誰かの拳が俺の視界を覆い隠す。
右頬に鋭い痛みがはしった。
少し遅れて脳が殴られたことを理解する。
「…やめてくれよ…」
「なんてー?聞こえないなぁーー?」
いやだ、いたい。
「言いたいことあるならはっきり言えば?」
こわい、こわい…っ
だれか、だれか助けて──────────
「キヨ、キヨっ!!!!!!」
「っ!!」
大きな声がして、今まで暗かった視界が急に開けた。
「…ひら…なんで」
俺の顔を心配そうに覗き込むヒラの姿がうつる。
「なんで、って。すごいうなされてたよ、大丈夫?」
うなされてた…?
はい、と冷たい水の入ったコップを渡され、ようやく心臓が落ち着いてきた。
俺の部屋よりも綺麗で、生活感のある部屋。
…ヒラの家だ。
じゃあさっきのは夢…?
「…ねえ、ほんとに大丈夫?そんな酷い夢見てたの」
「…なんか、レトさんも、うっしーとかガッチさんも、こーすけも、…フジも、俺の事を裏切っていく夢、だった」
口に出すだけで喉が詰まる。
「もしかしたら、あいつらほんとに俺の事そう思ってんじゃないかな、って、怖くって…!」
ひゅーひゅーと俺の喉がなる。
ちゃんと息ができてないのがぼんやりとだが分かった。
「キヨ、落ち着いておれと一緒に深呼吸しようか。吸ってー…、はいて…、」
優しい声が俺の鼓膜を揺らした。
…そういや、さっきもヒラは出てこなかったな。
「大丈夫…俺はキヨの味方だからね、何があってもキヨから離れていかないよ。」
「…さんきゅーな、」
うん、と頷いて、ヒラが微笑む。
こんなにも味方がいるのって心強いのか、と涙が出そうになった。
安心したからなのかあくびがひとつでる。
「…キヨ、寝る?まだ不安…?」
「ねる…わるいんだけど、手握っててくれねぇかな…?」
「いいよ、安心しておやすみ」
馬鹿にされるかな…と心配になったが、ヒラは少し笑って、俺の手を強く握ってくれた。
意識が段々となくなってゆく。
消えゆく意識の中で、ヒラが俺の涙を拭うのが見えた、気がした。
────ヒラ視点────
余程怖い夢を見ていたんだろう、キヨの頬に涙のあとが出来ている。
「…可哀想なキヨ。」
零れてきた涙を拭ってやると、キヨの頬が少し緩んだ気がした。
可哀想で、かわいい僕のキヨ。
安心したのかな、寝息が安らかになってる。
…レトさんも、うっしーもガッチさんもこーすけも、フジも裏切っていく夢、ね。
いいなその夢、現実にならないかな。
そしたらキヨは僕だけのものだ。
みんなに裏切られていったら動画なんて投稿出来なくなるだろうし、僕だけにあの可愛い笑顔を見せてくれるかもしれない。
…なーんて、キヨはどうせ僕には頼らないんだろうな。
「ぅっ…う"ぅ」
布団の中でキヨが呻く。
…ああどうしよ、キヨか苦しんでる!
慌ててキヨの手を握り直し、優しく、優しく耳に囁く。
「大丈夫、大丈夫だよ。僕はキヨの味方だからね。…みんなは敵でも、僕だけは味方だよ。」
何かあっても離れない、ずっとそばにいててあげる。
キヨはしばらく呻いていたけど、すぐに安定した呼吸になった。
…良かった。苦しんでるのを見るのは趣味じゃないからね。
突然ブーッブーッと音がなり、思わず飛び上がってしまう。
…なんだ、スマホか。
僕のとは違う、黒いシンプルなケースに入ったキヨのスマホ。
覗き込んでみると、フジからの着信だった。
うるさいな、キヨが起きちゃうだろ。
赤いボタンを押すと、スマホはうんともすんとも言わなくなった。
ロック画面はLINEや不在着信の通知でいっぱいだ。
どれも3日ほど前から連絡が取れなくなり、失踪したキヨを心配するもの。
こーすけ、レトルトさん、うっしー、ガッチさん、フジ、他の友達。
ちょっと迷って、僕はフジとのLINEを開く。
『キヨ大丈夫!?!?』
『なぁどこにいるんだよ』
『電話ぐらいとって』
『俺何かしたっけ…?』
『一旦話し合おう。見てるだろ?』
『キヨ』
『みんな心配してる、俺も心配だから』
『返事だけはしてくれ』
『既読だけでもつけて』
…愛されてるな、恋人がいなくなったら当たり前か?
僕はちょっと迷って、キーボードに文字を打つ。
『大丈夫ありがと、ばいばい』
既読がつくのを確認して、スマホの電源を切った。
…後でデータ全部消しとくかなぁ。
そんなことを考えていると、今度は僕の方のスマホがなった。
フジだ。
「はいはいもしもし?」
「ヒラ!?キヨのLINE既読ついた!!」
「ほんと!?返信は?」
「それが、…大丈夫、ありがと…バイバイ、って」
「ばいばい…!?」
「くっそあいつ変なこと考えて無いだろうな…俺レトさん達にも当たってみる!!」
「あ、わかった」
ぶつりと電話が切れる。
珍しくフジの口調が荒かった、相当焦ってるんだろうな。
…みんなばかだなぁ、キヨはここにいるのに。
ここで悪夢に魘されてたのに、助ける人は僕しかいない。
頬を撫でると、キヨはふにゃりと笑みを浮かべた。
何も知らない、可哀想なキヨ。
僕は味方だからね。
end
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