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ピエロは踊る3
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────レトルト視点────
うっしーの葬式は晴天の中行われた。
殺された日はしとしとと雨が降っていたのに、なんて皮肉。
窓のカーテンを開けてみると、強い日差しに思わず目を細める。
後ろにいる人影に「眩しくない?」と声をかけて見たけれど何も返事がなく、俺はそのまま窓を離れて小刻みに震えているスマホをとった。
「もしもし?」
『もしもしレトさん?いま電話大丈夫?』
「多分大丈夫。どうしたのガッチさん」
ガッチさんの後ろで、微かにフジくんやヒラくんの声もする。
…当たり前か、今日はうっしーのお葬式なんだし。
『……葬式、でれなさそう?やっぱり』
ガッチさんの言葉にゆっくりと振り返る。
ベッドに腰掛けてる人影に出来るだけ優しく声をかけ、隣に座る。
「………キヨくん。調子はどう?」
「レト、さ………?」
「ガッチさんがね、キヨくんの事心配してて。…お葬式でれそうかー、って。」
「葬式…?……………うっしー……!」
ぼうっとして生気を失っていたキヨくんの目から、大粒の涙が溢れる。
立って窓の方にふらふら歩きだそうとするから、俺は慌ててそれを止め、キヨくんの細い体を抱きしめた。
「やだ、やだ…やだ……!!うっしー、俺も…おれもうっしーとこいく………!」
「キヨくん…格子窓だから出れないよ………」
ばたばたと暴れるキヨくんの肩を優しく抱く。
『聞く限りきつそうだな…レトさん、キヨお願いね』
「ん、わかった」
ガッチさんが悲しそうに呟き、電話が切れた。
…ちょうど良かったのかも、俺に葬式なんてでる気はなかったし、出たとしてももう泣ける気なんてしない。
それよりはここでキヨくんと一緒にいたほうがいい気がする。
「れと、さん、離して…!!おれもうっしーとこいくから………!!」
「…そんなこと言っちゃあかんよ……」
…キヨくんは、いま精神科に入院してる。
うっしーが死んでからずっとこの調子で、家だと勝手に死のうとするから、フジくんが無理やり病院につれてきたんだ。
だから自殺防止用窓で、格子がついてる。
一週間前より随分細くなったキヨくんならとおり抜けられそうで、いつもひやりとするけれど。
「…キヨくん泣かんといてや………そんなん言ってもうっしーは、」
「ゔ、ぁあぁ…なんで、なんで、うっしぃ…」
縋るように伸ばしてきた手をとり、もう一度きつく抱きしめる。
ああなんて可愛そうなキヨくん。
あの王子様は死んでもなおこの幼気なお姫様を苦しめ続けるのか。
…でも大丈夫、いつか俺が笑顔にしてみせるから。
「…キヨくん、落ち着いて……俺がついてるから。大丈夫だよ…」
「でも、うっしーは……!」
「俺はいなくなったりしない、ずっとキヨくんのそばにいる。だから、そんなに泣かんといて……?」
小さい子をあやすように背中を優しく撫でながら耳元で囁く。
今まで虚空を見つめていた濡れた瞳が、俺をぼんやりと見つめた。
「……れと、さん…っ」
そうだよ、そう。
俺の名前を呼んで。
もう王子様なんて忘れてしまえ。
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