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酒 (usky)
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────キヨ視点────
夜中1時に酒を開けたのが間違いだったのかもしれない。
最初は家で1人で飲むつもりだった。
気づけばうっしーの家にいて、酒を一緒に飲んでいるという謎のシチュエーションに頭がショートしそうだ。
どうやって家からここまで来たのかも覚えてない。
ただべろんべろんになった俺を優しく見つめるその瞳だけが俺の脳を支配していく。
「うっしぃ〜のまねぇのぉ〜?」
「お前見てたらなんか冷静になるんだよ、酔っ払いって嫌だなーって」
「ひっどお〜おれおこっちゃったもんねぇ!」
酔っ払いの絡みほどうざいものは無い。
でもうっしーがそれを振り払えないぐらい優しい奴だということを俺は知っていた。
「キヨ、あぶね…っ」
ソファに押し倒し、真っ直ぐ俺を見つめる彼の耳元で囁く。
「おれうっしーのことすきだよ……」
酔っぱらいの戯言だと勘違いされるなら好都合。
俺も明日には忘れてるし、もちろんうっしーも忘れるだろう。
酒の力とはそれほど偉大なのだ。
「めーっちゃすき…♡なにされてもいーぐらい、だいすき... 、うっしーは…?」
アルコールを含んだ視線で彼のことを見つめ、
「俺もキヨのこと好きだよ」
そして気づく。
こいつもかなり酔ってんな、と。
「えー…ほんとぉ?」
一気に酔いが覚めてしまったことを悟られないよう、呂律がまわらないふりをしながら頬に軽く口付ける。
どうせ酔っ払いの戯言。
お互い朝になれば忘れるだけだ。
────牛沢視点────
とても酷い顔をしていたんだ。
夜中2時に鳴ったインターホンに頭痛を覚えながら出て、こんな時間に尋ねてくる非常識人になんて言ってやろうか考えてた言葉も飲み込んでしまうほど。
立っていたのは赤い顔に千鳥足、右手の缶ビール、すっかり出来上がってしまっていたキヨ。
本人は気づかないだろうが、鼻をすする音も目元の不自然な腫れも、何か彼に起こった事を暗示している。
その原因はなんなのか、改めて聞くのは野暮だろう。
素面で言えることなら態々酒なんて引っ掛けるわけない。
俺よりも背の高い、それでいて折れそうなほど細い身体を支えて部屋にあがらせる。
禁酒明けはこんなにも酒癖が悪くなるものなのかよ、と思わず苦笑い。
ヘラヘラ笑って廻らない舌と頭で中身の抜け落ちた話を楽しそうに話す。
聞き返すのすら面倒だ、と火照った彼の顔を見つめる。
じっと視線を感じて目を合わせれば逸らされる、その繰り返し。
生産性を全く感じられない無意味な行為にキヨは何を見出しているのか。
へにゃへにゃふにゃふにゃの会話に適当に相槌を打って聞き流しておけば、不意にキヨがふらりと立ち上がった。
「おこっちゃったもんねぇ!」なんて、何に怒ったんだよ。
あっちも酔っ払いで俺も話を聞き流していて、1秒前の会話なんてこれっぽっちも覚えてない。
それでもそのままの勢いで細っちい身体に押し倒された。
上背だけはあるおかげで俺は身体のバランスを崩し、ソファに身を投げ出す結果になる。
「おれうっしーのことすきだよ...」
甘く、熱を孕んだ声が俺の名前を呼んだ。
「めーっちゃすき…♡なにされてもいーぐらい、だいすき... 、うっしーは…?」
普段好意や感謝を全く口に出さない分漸く言う気になったか、と思えばどうやら違うらしい。
語尾に見えるハートマーク、掠れた声は甘く脳内を痺れさせる。
酒に酔ってるから、何か辛いことがあったから、たまたま目の前にいたのが俺だから。
だから、だからなんだ。
熱っぽい手で俺の頬を撫でるキヨが、1晩彼の友人を襲うなどあってはならないことじゃないか。
こんなこと俺のためにもお前のためにもならないだろ、と皮肉めいた言葉は次の瞬間熱に溶けて消えた。
ぱちん。
宇宙の何処かしらから飛んできた引力みたいなもので、1度も合わなかった視線が絡む。
そして気付く。
ああそういえばコイツ、酒強いんだった、と。
──────────────────────
長らく更新できずにすみません、今回は書き溜めから1作。
体調を崩していました。今はだいぶ良くなってきた方ですが、半年ほど前からまあ色々ありまして。小説の更新どころではなくなってて、ものすごくご心配かけたと思います。
また回復次第シリーズやらリクエストやら書きますので、もう暫くお待ち願います………!!
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