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本能的な恐怖に支配され、俺はめちゃくちゃに両腕を振り回す。少し遅れて、両脚もめちゃくちゃに繰り出した。空を切る手ごたえしかなくても、俺は声を荒げて反抗した。
「盗られるも奪うも、俺は一睡も寝てねぇんだよ、ばぁ~かっ‼」
相手の身体がびくんと大きく震え、そろりと離れていくのを感じた。
俺は、はぁはぁと息を弾ませながら、ヒビキを思いっきり睨みつける。
「俺に抱き着くな近寄るな触るなぁぁぁっ‼」
ありったけの酸素で叫んだら、ふっと身体が軽くなった。…否、力が入らなくなった。
「…ぁ…??」
目を白黒させていると、上体がふらっと傾いて、あら不思議床が目の前に迫ってくる…。
そのまま床に倒れこみそうになった俺を、幼馴染が寸でのところで抱き留める。
「…だから、いやだって…。」
口の中で唱えながら、俺の意識はそのまま、猛烈な睡魔に溺れていった…。
目が覚めると、寝室のダブルベッドの中にいた。
もそもそと起きだして、意識が拒否するのもかまわず過去の記憶を掘り起こす。そういや玄関で嫉妬に狂ったヒビキに襲われたんだっけか。玄関ドアに身体を押し当てられつつ、ぎゅうぎゅう抱きすくめられたのを思い出して、俺は項に片手を持っていく。…頬がほのかに赤く色づく。
ダイニングに行くと、キッチンに同居人はいて、何やら作業しているらしかった。扉を開く音が聞こえたのか。ヒビキは即座に顔を上げ、俺に気がついた。
「…あ、たっちゃん。起きたんだ。」
にこっと微笑む表情は、醜い嫉妬がすっかり抜け落ちたいつものヒビキだった。ほっとして、彼が案内してくれた食卓に腰かける。
「…手抜きで申し訳ないんだけど。」
ヒビキが微苦笑で持ってきたのは、お椀にこんもりと盛られた白飯と小鉢に入った生卵、ほかほかの味噌汁だった。
俺は目を見開いて、手を合わせつつ、ヒビキに訊く。
「…ご飯、自分で炊いたのか??」
ヒビキは後頭部に手をやり、いやぁと一言。
「レンチンのレトルトご飯だよ。」
「…ああ、なるほどな。」
頷きを繰り返しながら、味噌汁を一口啜る。
「あ、それは…。」
ヒビキに皆まで言わせない。俺は彼の言葉を遮った。
「フリーズドライの味噌汁だな。ちょっと味が濃い目だ。」
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