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俺の耳元で、どこか抜けたところのある幼馴染は柔らかく囁く。
「…オレ、今は学生だし経済的にも心もとないだろうけど、これから成人して大学卒業したらきっといい仕事について、たっちゃんや子供のためにお金たっくさん稼いでくるから。」
小刻みに震える俺の耳朶を幼馴染は実に美味そうに甘く噛む。
「…っんぁ…ひィ…ッ‼」
か細い声をあげる俺の耳元で、幼馴染はくすりと笑う。
「…また寒いの、たっちゃん??…大丈夫、俺が抱きしめて温めてあげるね。」
違うんだ。周囲の空気が寒いというより、お前が寒くて悍まし過ぎて震えているんだ。…真実は、口が裂けても奴には言えないが。
「いっぱい子供作ろうね…??一緒にいて楽しい家族になろうね…??」
圧倒的な包容力に抱かれながら、俺はそろりと目を伏せる。
ヒビキの見ている夢に、ヒビをいれられない自分がいる。だってそのヒビが原因で、俺達の関係に亀裂が入って壊れてしまったら…。俺は目を閉じて、重く実感する。俺自身がすでにヒビキなしでは生きていられない身体になっている。
…結局、その夜は一睡もできず、俺は幼馴染の腕の中で小さく震え続けた。
七月下旬。セミの声がより一層、自己主張を激しくしだした頃。
俺とヒビキは大学にいた。…佐藤と、彼と目を合わさないよう頑としてそっぽを向いている種田も一緒だ。何故なら…。
「…海に行く打合せすんのに、どうして大学来るんだ??」
当然だろう俺の質問に、佐藤があわあわと身振り手振りでオーバーに説明する。
「…だっ、だって、ほら…‼その、大学って集まりやすいし、夏季授業やらサークルで開いているし??クーラー効いていて涼しいだろ??」
懸命に捲し立てる佐藤に乗ってやるものかと、俺は精一杯の反抗を試みる。
「あのなァ…。俺が聞いているのは、別にこうして対面しなくても良いんじゃないかって話だ。SNSとかで話せば、お互いのスケジュールは把握できるだろ。…それこそ、クーラーが効いた各々の部屋で…。」
何を思ったか。佐藤はがばりと立ち上がる。
「だってそれだと、俺が種田に会え…っ、…あう。」
そして、やはり何かを察して、佐藤は急に椅子に座り込む。…どうやら、俺は佐藤の触れてほしくないところをぶっ刺してしまったらしい。トドメにならなきゃいいが。
「アッホらし…。」
空気を切り裂くようにして、種田が冷え冷えとした声を発すると、彼は急に椅子から立ち上がって振り向きざまこちらに確認してくる。
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