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過去との決別②
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『ドンドン!ドンドン!』
その時、物凄い勢いでドアが叩かれた。
『ガチャガチャ』とドアノブが回され、再びドアが叩かれる。
「おい、開けろ!開けないなら、蹴破るぞ!」
聞き覚えのある声に、涙が溢れる。
そして『ガン!ガン!』と音が鳴った後、鈍い音が鳴ってドアが開いた。
上半身裸でぐったりした僕を見たらしく、海は慌ててドアを閉めた。
「きみ、誰?高校生?いけないな〜、学校の備品壊しちゃ」
僕に覆いかぶさっていた先輩はそう言うと、ゆっくりと立ち上がった。
「……よ。…お前……何してんだよ!」
海はそう叫んで先輩に殴り掛かる。
先輩は軽く避けると
「野蛮だな〜。これだから高校生は」
そう言って笑っている。
海はぐったりしている僕に駆け寄り、そっと着ていた制服の上着を掛けた。
そして僕の前に立ちはだかり
「この人に指一本、触れさせない!」
海の後ろ姿に涙が滲む。
「へぇ〜、カッコイイ」
先輩は気怠そうに拍手をしながらそう言うと
「何?スーパーマンにでもなったつもり?」
冷めた目で海を見つめている。
「そんなんじゃ無い!」
海がそう言って先輩を真っ直ぐ見つめていると
「本当…予定外が多過ぎて腹が立つ」
そう言って海の顔に蹴りを入れようとした。
息を呑むと、海は片手でその足を払うと、先輩に向かって蹴りを入れようとした。
「海!駄目だよ、手を出しちゃ!」
僕が叫ぶと、海は蹴り上げようとした足をその場で止めて、ゆっくりと足をおろして防御の姿勢を取っている。
「気に入らないな〜。何?格闘技とか習ってる系?ナイト気取ったその面、マジでムカつく」
先輩はそう言って、胸ポケットからナイフを取り出した。
「ねぇ、これで俺が自分の身体を傷付けて、お前がやった事にしたら…どうなるのかな?」
先輩は楽しそうにクスクスと笑う。
「和哉もその状態だろう?高校生が和哉を狙って強姦していたから、俺が守ろうとしたら切られたって…。きみ、高校生だよね?人生、終わっちゃうね」
そう言うと
「あぁ…本当に……。和哉、どうしてきみは僕の思う通りにならないんだろうね。悪い噂流しても、いつまでもこの大学に残ってるし。まぁ、あのクソ教師が殺されたのは、予想外のラッキーだったけど」
って呟いた。
「まさか…小関先生を殺させたのは…」
思わず呟いた僕に、先輩は驚いたように僕の顔を見て
「何?僕がやったって?」
そう言うと大爆笑し始めた。
そして急に真顔になって
「和哉、ドラマの見過ぎ…。俺は何もしてないよ。まぁ、死んでしまえば良いのに…とは思ってたけどね」
そう言って遠くに目線を飛ばすと
「だって、和哉から手を引けって言うんだ。
和哉には和哉の人生があるのに、俺がそれを邪魔したら駄目だって言うんだよ。邪魔なんて、してないのにね…」
と言って再び笑い出す。
「で、お前…和哉を抱いたの?」
先輩は海を見つめると、そう呟いた。
海がその言葉にびくりと身体を震わせると
「ふ〜ん、そう。じゃあ、俺と仲間じゃん」
先輩は冷めた視線でそう言うと
「あのクソ教師よりはまだマシか。和哉、良かっただろう?男に身体開くようにしつけたの、俺だから分かるよ。初めてのキスも、初めてのセックスも…全部俺がこいつに教えた」
先輩の言葉に海が拳を握り締める。
(あぁ…もう、本当に終わりだ…)
僕は、白くなる程握り締めている海の手をぼんやりと見つめていた。
「こいつ、可愛くおねだりするだろう?男を魅了する術を、徹底して教え込んだ。感謝して欲しいなぁ〜」
得意気に話す先輩に、海がゆっくり口を開いた。
「だから?」
そう吐き出した海に、先輩がムッとした顔で海を見た。
「だから何なんですか?俺が和哉さんに惚れたのは、一見、線が細いのに意思が強くて…。甘え下手で頑固で我儘で…。それなのに、時折寂しそうに笑う顔が堪らなく辛かった…」
後ろ姿だったけど、海が泣いているのがわかった。
「後悔しています。どうであれ、無理矢理関係を持ってしまった事を…」
海の言葉に僕は茫然としていた。
(後悔?…それって……)
ショックを受けたその時
「俺は!俺は…別に和哉さんを抱けなくても良かったんです。この人が…和哉さんが本気で笑ってくれてれば、俺はそれだけで良かったんです。
でも、近付いたら欲が出て…全てが欲しくなってしまいました。本当に…俺は最低な人間です」
そう続けた。
「海……」
思わず呟いた僕の声に、海がビクっと身体を震わせる。
「なに美談にしようとしてるの?馬鹿じゃないの?結局、和哉とやったんだよね?お前も俺と同類じゃないか」
馬鹿にするように笑う先輩に、海は身体を強張らせて黙ってしまう。
「で、和哉。どうするの?この子を犯罪者にするか?俺のモノになるか」
先輩に言われて、僕の身体が震える。
先輩は他人も自分も傷付けるのは平気な人だ。
いくら僕が海を庇っても、周りを使って犯罪者に仕立て上げるのはお手の物だろう。
どうしたら良い?
海をどうしたら助けられるのかを、必死に考えていた。
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