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臆病者の恋
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跳ね除けられる覚悟で回した匡の腕は、千種を簡単に閉じ込めそのまま胸に引き寄せることに成功していた。
「ち、千種さん?」
その無抵抗な反応が逆に恐ろしく、匡はそっと名前を呼んでみるが、イヤイヤと首を横に振られ胸に顔を埋められてしまった。
(え、なんだこれ、可愛い)
滅多に見せない千種の甘えた素振りに、匡は状況を一瞬忘れそうになったがいやいやと思い留まり気持ちも顔も引き締める。
セフレだったらこの関係を続けてもらえるのか、その確認が先だ。
「あの、セフレだったら」
「お前、俺と、付き合えるのか?」
「付き合えます、て言うか、付き合いたいですっ
俺、千種さんのことが好きなんですっ」
千種の心許ない問いかけに、考えるより先に口が動いていた。
勢いにつられ、千種を抱き締めていた匡の腕に力が籠もる。
一方の千種は、混乱していた。
聞き間違いじゃなかったのかという驚きが強過ぎて、理解するのに時間が掛かっていた。
今までセフレで十分だと、自分の気持ちを麻痺させてきた頑なな拘束が解け、じわりじわりと匡の言葉が染み込んでいく。
『俺、千種さんに付き合っても良いって思われるまでセフレで我慢しますっ』
『付き合えますっ、て言うか、付き合いたいですっ
俺、千種さんのことが好きなんですっっ』
セフレしか無理。
恋人なんて高望み。
自分の気持ちを偽り、ルールで縛ってきたのに。
ブワッと昂ぶった気持ちに押され、思わず自分も付き合いたいと口に出しそうになった、が。
千種の脳裏に過去の別れが過り、喉奥でその言葉を止めてしまった。
もし、匡と付き合って。
もし、別れることになったら。
ルールがあったからこそ守られてきた部分が、曝け出されて壊れてしまう。
臆病で後ろ向きでどうしようもない自分を、匡に知られるのが怖い。
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