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まずは仮からどうでしょう
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【嘘から始まる恋】だなんて、妄想だ。
ベランダで煙草を吸いながら俺は一人、呟いた。
何も俺だって、唐突に否定するつもりは無い。
でも、それでも……
「先輩、良ければ俺と恋愛的な意味で付き合ってくれませんか…!」
社員の女性から人気が高い俺の部下、美春(ミハル)に、眉間に皺を寄せながら、耳元で告白されたのは数週間前の話。
『……美春、悪ぃな。男の趣味はねーんだ。』
「一生のお願いです!!お願いします!人助けだと思って!!」
『あのなぁ…お前何回生き返れば気が済むんだよ。』
「可愛い部下を見捨てるんですか!!」
話を聞くと、ムカつくほど整った容姿をしている所為か、美春は振っているのに彼女と思い込んでいる迷惑な女性に困っているらしい。
そこで解決策として、俺と付き合っているフリをすればその女性も諦めてくれるだろうというわけだ。
「俺の家、部屋余ってますし、なんなら先輩の身体一つでも大丈夫です!必要なものは俺が準備しますし!お願いします!」
『…なんで俺なんだよ。俺は31、お前は確か…24かなんかだろ。年上のオッサンより、後輩とか同僚とかに頼めよ。』
「…俺に慕ってくれるような後輩とか、相談乗ってくれるような同僚がいると思います??」
『自慢気に言うな。』
そう、美春は俗に言うイケメン。社員の女性を虜にする所為で、友達が居ないのだ。というより、美春が自分で縁を切っている、という所もあるのだが。
『……ちょっとの間なら付き合ってやるから、その間にその女性なんとかしろよ。』
「先輩〜ッッ…!!今度飯奢ります!」
『馬鹿、部下に飯奢らせる上司がいるか。』
「先輩はこの部屋使って下さい。布団は客様のやつありますんで、他は好きに使って下さい!」
イケメンってのはどうしてこうも良い家に住んでいるのか…。
「ところで先輩、何頼みます?」
『……は?』
「?、夕飯、デリバリーなんですけど、何食べたいですか?」
『いや、俺に気使わなくて良いから。別に人の作ったやつ大丈夫だから…
「??、俺、飯はいつも買ったやつですよ?」
???、嘘だろ??
「ピザとかで良いですか?」
注文しようとする美春の手を掴んで止めた。
『馬鹿!!胃もたれするわ!!
え?お前いつも外の飯食ってんの?
オッサンが知らないだけで今の子皆そうなの?』
「外の飯ってwいや、別にそういう訳じゃ無いですよ。」
え、何?箱入りなんたら、とかそういつやつ?
……、ええい、面倒臭い。
『美春、お前手料理は食えるか?』
「?、大丈夫ですよ。」
『好き嫌い、アレルギーは?』
「無いです。」
『ちょっとスーパー行ってくるわ。
なんか適当に作ってやるから大人しくしとけ。』
ぽかん、とする美春を放置して立ち上がった。
「…えっ!?今から!?ちょ!マジですか!先輩の手料理食えるんですか!??」
後ろから美春がバタバタと追いかけて来る。
「先輩!待って!お金は俺が出します!
あと、こんな時間に一人は危ないですよ!」
ったく、イケメンは行動もイケメンかよ。
「…………うっっっま……!!」
口に野菜の煮物を入れた美春が呟いた。
『そりゃどーも。作った甲斐あるわ。時間もあれだったから結局殆ど店のもんだけどな。』
まさか米どころか炊飯器すら無いとは。
「じゃあ先輩、もしかして昼の弁当も手作りなんですか!?」
『おう、一人暮らしだと料理上手くなんだよ。
……お前は例外だけどな。
…美春、今後この家で俺が暮らすとして、買った飯ばっかりって言うのは認めねぇから。家事は俺が負担させて貰う。』
「!、き、肝に銘じておきます。」
コイツに飯を作るのは…、案外悪くねぇな。
『んん〜………』
まだはっきりとしない意識に、見覚えのない天井が入り込んできた。
あぁ、そうか。アイツの家で恋人のフリするっつったんだっけか…。
今日は休みならゆっくり……いや、飯作んねぇとダメだった。
着替えて身支度してから階段を降りると、一階から騒がしい声が聞こえてきた。
「マジで入ってくんなよ。…それ以上は本当に、警察呼ぶから。」
どうやら噂の女性が朝からやって来たらしい。
朝から迷惑なやつだな…、しかし、止めようにも止め方が分からない。
「だから違うんだっ……って、先輩!」
俺の姿に気付いた美春がズンズンと俺の腕を掴んで女性の元まで引っ張っていく。
「おい、これ俺の恋人。いい加減に諦めろよ。もう分かっただろ。」
『ちょ、みは…』
途端、美春の唇が俺の唇に触れた。
柔らかくて、少し濡れていて…
女性の悲鳴と暴言が遠ざかったところで唇が離れた。
「先輩、急にすみません!アイツ、なかなかしつこくて…!………先輩?、大丈夫ですか?」
美春の言葉が耳から耳へと抜けていく様で。
立っているので精一杯なのと、顔が熱いのが分かる。……喜んでる…のか…??
『え、あ、おう…』
違う、落ち着け、俺!別に男はノーカンだろ!
なのに、なんで喜んでんだ!
絶対美春に気持ち悪いって思われてるだろ!!
恐る恐る顔を上げると、
同じ様な顔をした美春と目が合った。
「……先輩…、ズルイですよ…」
ぼそりと何か言ったように見えたが、次の瞬間にはいつもの顔に戻っていて。
「びっくりしたでしょ?ほんとすみません…!
あの人の事は忘れて、朝飯食いましょ。
俺だって、パンくらいなら焼けますから。」
そう言って、家の中へと促される。
結局何故あんな顔をしていたのかは聞けず終いだった。
『あれから噂の女性はどうなったんだよ?』
「あ〜、ぱったり来なくなりましたよ。嘘みたいに(笑)」
『へぇ、良かったじゃねぇか。これで俺らの関係もおしまいって訳か。……あ、鍵、返しとくわ。』
案外早かったな。俺は美春との生活、案外楽しかったけど……
「…………」
美春が鍵を受け取ってから、ぱったりと喋らなくなってしまった。
『美春?どうし…』
「先輩、今から何言っても怒らないって約束してくれませんか…」
もそもそと言いにくそうに口を吃らせ、強請られる。
『は?内容によるけど……お前まさか今日提出の書類忘れたとか…!!』
「ちゃんと提出しましたよ!!それも昨日に!!」
『じゃあ何だよ?』
「…………実は女性にはっきり言うのは得意な方でして、先輩に証明して貰わなくても、捨てられた…、と言いますか……」
『……は?』
「勿論悪意があった訳じゃ無いですよ!?でも、先輩、俺の事、一人の男として見てくれ無いでしょ?…だから二人で生活すれば、ちょっとは意識してくれるかなって…」
途端、美春が俺の手を掴んで俺に話しかけて来た。
「卑怯とか、意気地無しとか、どう思われても良いです!俺、先輩の事、本気で好きですから!
……もし、先輩も同じだって言うなら、俺とまた恋人続けてくれませんか…?、勿論、次は本気で。」
【嘘から始まる恋】だなんて、妄想だ。
だって、後輩なんかに嘘つかれて、男なんかに告白されて、イケメンのくせにオッサンに恋して…
なのに、なのに、嬉しいだなんて、
『………鍵』
「へっ?」
『あそこ、また帰っても良いんだろ?』
「ッッ…!!も、勿論です!!」
鍵を受け取った俺の手が急に美春に引き込まれる。
『ぉわ!?、ちょっ!…んっ!』
美春に優しく口付けられる。
「もう離してって言っても離しませんから、」
『上等じゃねぇか、その言葉、そのまま返してやるよ。』
そう言って俺達はもう一回キスをした。
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