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案件1 宇多島 連
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【案件1 宇多島 連】
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いつもの呑み屋へ行くと、既に奥の座敷で一人、權(はかり)さんは呑んでいた。
「お、お疲れ様ー」
そのふわっとした笑顔に、癒される。
「お疲れ様です! ごめんなさい遅れちゃって」
「いやいや。大変だねえ、そっちも」
靴を脱いで、畳へあがる。はあ、今日も權さん、かっこいいなあ。
初対面は、某会社のパーティー。同業者ひしめく戦場で、ライバルとして知り合ったのがきっかけ。腹の探り合いをするつもりが、同い年でやたら話がはずみ、いつの間にか、すっかり打ち解けてしまった。
今はこうして、呑み友達として会うほどに。
「えー、なに呑んでます?」
「日本酒。なんか……桜? の、やつ?」
「どういうことっすか。味が?」
「わかんない。呑む?」
さっきまで自分が口をつけていたお猪口を、權さんは差し出す。呑んでみたけど、桜の香りも味もしなかった。
「えー、わかんないっす」
「んー。…………店の人がなんか……言ってたけど、………忘れちゃった」
「また人の話聞いてないんだから」
「んふふー」
あー。可愛い。駆けつけ一杯のビールを注文するついで、お店の人に聞いてみる。ほんのり桜の味がするらしい。わからん。新商品勧められてそのまま頼んじゃう適当さとか、無頓着さとか。權さんといると、いい意味で脱力出来る。
他にも料理を幾つか頼んで、すぐ運ばれてきたビールを体内へ流し込んだ。
「…………はー。生き返る」
「死んでたの」
「死んでましたよー。金曜すもん」
「あー、ね。お疲れ様」
おとなしい、って単語がぴったりの權さんが、また少しだけ笑う。いつも控えめで、真面目そう。空気扱いされるのが、たまの悩みだと何度か愚痴っていた。まあ、確かに。目立つところないもんなあ。
綺麗なんだけど、地味。不思議な人だ。よく見ればかっこいいとは思う。俺よりは低いけど、背もあるし。肌も綺麗だし。髪型が地味なのか? ああ、それはある。スーツも腕時計も鞄も、きっと値段を聞いたら目玉飛び出るやつ。なのに、主張してこない。嫌味に派手じゃない。それを選ぶセンス。
「なに人のことじろじろ見てんの」
「えっ、あ……や、すいません」
やべ。ガン見しちゃった。こっちが慌てたら、もう酔ってるのかとケラケラ笑ってくれる。はあ。癒し。
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