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「爪?」
「うん。いつもちゃんと切ってあんなあって、見てた」
いつも。
見てた。
「……まあ、社会人なんで」
「そうなんだ」
「なんだと思ってるんすか」
「会社で爪切る人いない?」
「あー、いるいる。おっさん。俺あれ超嫌い」
「僕も。家でやって来いよって思う」
「ね。つかなんで会社に爪切り置いといてんだか」
「ね。あんな大人にはなりたくない」
などと、大人が供述しており。
その大人は手のひらを重ねて、そのまま目を閉じた。
…………寝れない。
ていうか、むしろ。
「…………………」
目をぎゅっとつぶる。空いた片手で額をおさえた。落ち着け。脳裏にいちいち焼きつけるな。寝顔見るの初めて。だよな。前回はそれどころじゃなくて、覚えてない。
好きになっても意味がない。
って、思うことが意味ない。
好きだし。
どうしようもない。
そこに悔しさもつらさもあるけど、だからって、惨めにはならないから。
「怒ってる?」
寝たと思ったら權さんはまだ起きていた。目を開けずに俺は答える。
「えー? 怒ってないですよ」
「そんな顔してる」
「耐えてるんです」
「何に?」
「………………キスしたくて」
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