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「この間は本当にごめんなさい。体調はどう?」
「いや、そんな謝るようなことじゃないっすよ。体調も全然問題ないんで気にしないでください」
週明け、講義の終わりを待ち構えていた若葉と藤実が改めて謝罪に来た。
二人は企画者として責任を感じているようだった。酒は自分の不注意で飲んでしまったのだから、自業自得だ。神妙に謝られてしまい、かえって申し訳ない気持ちになる。
建て替えてもらっていたカラオケの部屋代とドリンク代を出そうとすると、二人に全力で固辞された。
「それにしても油断してたわー。アルコールと、ソフトドリンクはトレーが別だったはずなんだけど……」
藤実だけは、まだ納得がいっていないようで、店側の不備を疑っていた。
まあ週末の夜だし、注文が立て込んだりして忙しかったのだろう、となんとなく想像した。おまけに大人数での注文だったのだから、何かしらのミスがあっても不思議ではない。
あの時の失態はかなり恥ずかしいので、正直あまり掘り下げて欲しくない。
「いや、本当に気にしないでください。結局深泉さんに助けてもらったんで」
「あ、そういえばふかみーはどうだった?」
「『ザ・王子』って感じだったでしょ?」
深泉さんの話をすると、二人の表情が明るくなった。
「はい。車を呼んでくれたんですけど、いや、ご家族に悪いですよって言ったら、『ああ家族のじゃないから大丈夫』って」
「あはは! 言いそう〜」
「いつもあんな感じなんすか? 俺、圧倒されちゃいましたよ……」
深泉さんの話題に逸れたのをこれ幸いとばかりに、話の脱線を促進させる。
うっかりカーテンの下りを話してしまわないように用心しながら、深泉さんの王子エピソードを引き出していった。
交友関係の広さや話しやすい雰囲気から、恋の悩みを相談しているうちに惚れてしまった女性が多いとか、高齢者や子どもにもあのノリのままで優しいとか、ペンケースを忘れてしまい高そうなペンの方を貸してくれて、そのままプレゼントしてくれたとか……。
予想通りというか、彼の人柄がよく分かるエピソードばかりだ。
話を聞いていると、ふと重大なことに気付いた。
○○さんの「お仲間」の件、深泉さんに聞けば何か分かるんじゃないか?
恋の悩み相談をされていたのなら、○○さんも可能性がある。
カラオケでの調査は散々な結果だったが、思わぬ幸運が転がっていたものだ。
用事を思い出したフリをして、二人に挨拶してその場を去った。
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