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【キセキ相棒】彼氏にしてほしい9つのこと、してもらいました【黒バス】
出会いがしらに、片膝をついた姿勢で手の甲にキスされる→紫氷
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一週間に一度、講堂に全学年集まりキリストを崇める。それがこの学校の決まりだ。
何故かって、それはミッションスクールだから。キリスト教の教えを元に進められる学校生活の中で、やはり神はイエス・キリストだ。
俺はこの講堂にあるステンドグラスが好きだ。ほとんど朝しか来たことの無い場所だけれど、朝日を浴びて光るステンドグラスの天使は、美しいと息が漏れるくらい輝いている。
そんな少し現実離れしたこの空間が堪らなく落ち着くんだ。
「何してるアルか。早く行くアルよ」
ほんの少しステンドグラスを見ていたら、今日の集まりが終わっていたようで、近くに来ていた劉に最速されてしまった。
「ああ、ごめん。今行くよ」
そう言って、劉の後を着いていこうとしたら、少しだけ後ろに引かれる感覚。
自分も背に比例して大きいとは思う手よりも、倍は大きい手なんてこの学校にほんの数人しかいないだろう。しかし、その少数の中に男の自分の手をわざわざ掴む何て物好きは一人しかいない。
「どうしたんだい、アツシ」
「んー、ちょっといいー?」
講堂に集まる時くらいは、とこの前注意した事をきちんと聞いてくれているアツシの手にはお菓子の袋が無い。
お腹が空いたのだろうか?それなら劉の前でもいいと思うが。
そんな事を考えているうちに、「ちょっと室ちん借りてくねー」と、彼独特の間延びした声と共に俺は手を引かれていった。
連れてこられたのは、あのステンドグラスの目の前。
「アツシ?」
不思議に思い、アツシに再度問いかける。
アツシは引いていた俺の手を離し、こちらに振り返った。
ステンドグラスのせいだろうか。アツシの目がとても、優しくて。まるで大好きなお菓子を目の前にした時の様に目は細められ、口元は緩く孤を描いていた。それが美しくて、単純な言葉だけれど、とても格好良くて。顔に熱が集まるのを感じた。
「室ちん、顔、赤いね」
「うるさい」
だって、しょうがないじゃないか。お前がそんな顔をするから。
クスリ、といつもなら笑わないような笑い方をして、片膝を床につき、まるで王子が妃に礼をするかのようにアツシは頭を下げた。
「アツシ……?」
「ちょっと黙ってて」
静かに言われた言葉。もう生徒は講堂を出て自分の教室に入っている頃だろう。
しかしステンドグラスに囲まれたこの講堂だけはまるで別世界のように静まり返っていた。
アツシが俺の左手を取る。
「室ちん、結婚しよう」
突然発せられた声と共に、左手の薬指に落ちる唇。
しばらくその言葉の意味が理解できずにいたが、理解した途端、恥ずかしさよりも嬉しさの方が上回った。
別に、今じゃなくても。別に、ここじゃなくても。色々な事が頭を巡るが、それさえもどうでもよくなって、俺は自然と笑顔になっていた。
「はい」
そうして、誓いのキスとでも言う様に、ひざまずくアツシの唇へ、今度は俺から唇を重ねた。
天使がいるステンドグラスの目の前で、大好きな人からの最高のプロポーズだなんて。
これで泣かない人はどれくらいいるだろうか。
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